群馬の追い上げを食らいながらも終始リードした千葉Jが、最後まで強度を落とさずに勝利
千葉ジェッツは11月8日、敵地オープンハウスアリーナ太田で群馬クレインサンダーズと対戦。千葉Jはディー・ジェイ・ステフェンズがコンディション不良で欠場となったが、群馬もエースのトレイ・ジョーンズをケガで欠き、さらにインサイドの要であるケーレブ・ターズースキーは出場停止と、互いに外国籍選手のロスターが万全でない状態だった。何度も群馬に追い上げられるも、最後までリードを保った千葉Jが86-78で勝利を収めた。
序盤から千葉Jは中と外を上手く使い分け着実に得点を重ねていく。攻め手がなかなか見つからない群馬にタフショットを打たせると、ファストブレイクでジョン・ムーニーが得点し10-2となったところで、群馬にこの日最初のタイムアウトを取らせる。この試合、好調だった辻直人に3本の3ポイントシュートを決められるも、二上耀の長距離砲でやり返すなど簡単に流れを渡さない。オフェンスがスムーズにいかない時でも金近廉がタフショットスリーを決めるなどリードを保っていたが、終盤にコー・フリッピンに3ポイントシュートを決められ、1点リードで第1クォーターを終える。
金近が3本のフリースローを成功させるところから始まった第2クォーター。千葉Jはアイラ・ブラウンも3ポイントシュートを沈めリードを広げるが、並里成とエリック・マーフィーにアウトサイドでのワイドオープンを突かれ追い上げを食らう。負けじと金近の2連続3ポイントシュートでリードを広げるが、切り替えの早い群馬に速攻を許し同点に追いつかれてオフィシャルタイムアウトを迎えた。その後も一進一退の攻防が続き、千葉Jの1点リードのまま前半を終えた。
後半、ファーストプレーで富樫が3ポイントシュートを沈めると、金近もトランジションスリーで続き、早々にタイムアウトを取らせる。タイムアウト後も攻撃の手を緩めずに金近の5本目となる3ポイントシュートやムーニーのペイントでのシュートでリードを2桁に乗せる。だが、フリッピンのバスケット・カウント、木村圭吾とマイケル・パーカーの3ポイントシュートによる0-8のランを食らい、一気に点差を詰められた。それでも、我慢の展開となる中で、終盤に原修太が連続得点を挙げて67-59と突き放して最終クォーターを迎えた。
フリッピンや辻の得点で追い上げられるも、千葉Jはディフェンスの強度を上げ、タフショットを打たせることに成功。二上やムーニーが得点し、西村文男が連続で3ポイントシュートを成功させて、再び2桁のリードを奪った。その後もインサイドでアドバンテージを発揮し、残り時間と得点差を上手くコントロールした千葉Jが勝利をもぎ取った。
ジョン・パトリック ヘッドコーチ「自分の息子と同じ歳なので、息子を見るような気持ちがある」
Bリーグのレギュラーシーズンに加えて、東アジアスーパーリーグの試合も並行して消化している千葉Jは、常に万全と言えるロスターを揃えることが難しい状況だ。今節もステフェンズが欠場となる中、ルーキーの金近がステップアップを見せて、勝利に貢献した。
矢継ぎ早に試合が訪れる過密スケジュールであるため、金近は試合の中で成長していかなければいけないことを感じており、「相手どうこうではなく、自分たちにフォーカスして、自分たちのできていないところを何度も確認することを意識しています」と話す。実際に、金近はこの試合での勝負どころだった前半から第3クォーター序盤で均衡を破る活躍を見せた。
金近はシーズンハイの5本の3ポイントシュートを成功させて、日本人最多となる18得点を記録した。日本代表の強化試合などで、その実力は証明済みではあるが、得点能力が高い選手を多く擁する千葉Jにおいても得点源として十分に機能している。
ジョン・パトリックヘッドコーチも「彼の年齢を考えると非常に早い活躍ぶりです。自分の息子と同じ歳なので、息子を見るような気持ちがあります」と金近に対する期待を語った上で「本人がまだ自分の可能性に気が付いてない部分があります」とさらなる成長の可能性を大きく感じている。
金近もパトリックヘッドコーチと良好な関係性を築けていると言う。「毎試合『もっとできるよ』と声をかけてくれて期待されているのを感じているため、応えたいと思っています。今日のように3ポイントシュートが入っている日はいいのですが、どうしても波があるものなので、シュートが入らない時に他の形で得点したり、ディフェンスで相手のエースを止めたりできればチームにとってプラスになると思うので、シーズンを通して成長していけたらと思います」
日本代表のデビュー戦で3ポイントシュートを量産したため、シューターのイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし、ウイングとしてハンドリング能力も高く、攻めの引き出しをさらに増やそうとしている。「サイズの割にはハンドリングができていると思いますが、小さい選手とマッチアップした時に守られてしまうことがあるので、身体の幅を使って得点できるようにしたいです」
さらに千葉Jの真骨頂であるチームディフェンスの意識も高い。「自分のところでやられる場面はなかったですが、その分僕が他の部分をヘルプできればよかったです。自分のマークマンに寄りすぎていることもあったので、マークマンを離す勇気を持って、チームメートを楽にさせる動きができるようになりたいと思っています」
ルーキーながら一線級の活躍を続けているものの、パトリックヘッドコーチが話した通り、金近にはまだまだ無限の可能性が秘められている。今後、日本を代表するウイングプレーヤーになっていくことは容易に想像できる。そして、観る人の多くが底知れぬポテンシャルに期待せずにはいられないだろう。レギュラーシーズンの20%を消化したが、チームとしても金近個人としても、シーズンを通じた成長が多く見込めるはずだ。