ルカ・ドンチッチ

「盛り上げるためにも思い切って打つ」

マーベリックスは開幕4連勝と最高のスタートダッシュを切った。現地11月1日、ホームのブルズ戦。相手の粘りに苦しみながらも、残り2分の勝負どころでこの試合ではシュートに当たりのこなかったルカ・ドンチッチが強引に打つのではなく、連続アシストでジェイデン・ハーディーとジョシュ・グリーンの3ポイントシュートを演出。さらにはグラント・ウィリアムズも3ポイントシュートで続いて勝利を決定付ける。アメリカン・エアラインズ・センターは試合の流れとは別にもう一度沸いた。MLBのテキサス・レンジャーズがワールドシリーズを制し、創設63年目でダラスに初のタイトルをもたらしたからだ。

マーベリックスはレンジャーズに続いてタイトルを勝ち取ることができるのか。まだ開幕から1週間が経過しただけだが、ここまでは4連勝という結果だけでなく内容も良い。エースのドンチッチは身体を絞ってトレーニングキャンプに現れた。それは彼自身のプレースタイルにも、チームの戦い方にも良い意味で反映されている。

NBAでの過去5シーズンとはプレースタイルが違う。強引に仕掛けてコンタクトを受けながらシュートをねじ込む彼らしいアタックの回数が減り、3ポイントシュートとプレーメークが増えた。これまで最も多くても8.9だった3ポイントシュート試投数は12.3へ、3ポイントシュート成功率は35%前後だったところが48.6%へと急上昇。アシストが増え、ターンオーバーは減っている。レブロン・ジェームズからステフィン・カリーへ、とでも表現すべきプレースタイルの激変が起きている。

マブスのバスケも大幅に変わった。ドンチッチを中心にハーフコートバスケットで勝負していたチームが、ペースを劇的に上げて『走るチーム』へと生まれ変わった。ビッグネームの補強はなかったが、デリック・ジョーンズJr.とグラント・ウィリアムズが攻守にチームを支え、1巡目12位指名のルーキーであるデレック・ライブリー二世が即戦力の『走れるセンター』としてマブスの新たなスタイルを支えている。ドンチッチが下がる時間帯のオフェンスを引っ張るカイリー・アービングが左足のケガで2試合を欠場しているが、それでもマブスの勢いは止まらない。

ドンチッチの33.8得点はドノバン・ミッチェルの31.5得点、ディアロン・フォックスの31.3得点、ステフ・カリーの31.0得点を超えてリーグトップの数字。絶好調の秘訣をドンチッチは「足だね。きっちり走っていること。シュートの位置が低くなったことだと思う」と言う。「あとは積極的に打っていく姿勢だろうね。チームを盛り上げるためにも思い切って打とうとしているんだ」

指揮官ジェイソン・キッドは、「開幕4連勝でも、手放しで喜ぶ気にはなれない。シーズンは長いし、始まったばかり。我々は新しい選手も多く、これからお互いを学ばなければいけない。改善すべき点はまだまだ多い」と語るが、笑顔こそなくても「選手たちはプレーを楽しんでいる。互いに助け合い、小さなことでも応援している」と、良い手応えを得られているのは間違いない。

昨シーズンはプレーオフ進出を逃す大失態となったが、マブスは生まれ変わった。ドンチッチの好調が、マブスの好調がどこまで続くのか。その時期が長引けば長引くほど、新たなチームは自信を増し、本物の実力を培っていくはずだ。