パーマーとのマッチアップ、19得点は「是」か「非」か
昨日行われたアルバルク東京vs横浜ビー・コールセアーズとの第1戦の立ち上がりの出来事。最初のポゼッションをジェフリー・パーマーに託す横浜。パーマーはインサイドの攻防で竹内譲次を押し込み、回り込む動きからフック気味のシュートを沈めた。最初の攻撃で攻められたということは、狙われたということ。これを止められなかったことを竹内は「最初の1本を決めて乗らせてしまった」と悔やむ。
この試合で両チーム最多となる19得点を挙げたパーマーとのマッチアップについて、竹内はこう説明する。「ペイントのシュートがうまくて、タッチも良い選手。サイズ的に自分が有利なのでドライブさせるように守りました。結構フィニッシュもうまくて、そこは明日に向けてシフトチェンジします。これからも交流戦、2試合しかやる機会がないチームとの対戦が続くので、1試合目から素早くアジャストすることが必要になってきます」
まるで敗戦の責任を語るような言葉が並ぶが、A東京が98-66で圧勝した試合を終えてのコメントだ。勝利を決めた後、竹内はヒーローインタビューとして観客の前でマイクを握ったが、そこでも「自分がマッチアップでやられてしまって」と反省の言葉を述べている。
それでも、竹内はヒーローインタビューに値する働きを見せていた。最初にやられたシーンは確かに印象的だったが、その後はすぐにアジャストして、相手の攻めに対応する受け身の姿勢ではなく、相手にボールを持たせないアグレッシブなディフェンスを披露している。
パーマーは相手の得点源、しかもチームディフェンスが完璧と言っていいほど機能していたため、横浜はパーマーにボールを集めるしか手がなかった。そんな1on1の連続をしのぎ、相手に付け入る隙を与えなかった竹内は、間違いなく昨日の勝利の立役者だった。
それでも「数字だけ見たらやられていると思います。1対1の部分でもう少し抑えたいです」と、やはり竹内から景気の良い言葉は出て来ない。
ファウル数をコントロールしながら相手のエースを抑える
どの試合でもそうだが、竹内には『我慢の時間帯』が多い。外国籍のガード(ディアンテ・ギャレット)を起用している以上、オン・ザ・コート「2」の時間帯には竹内が相手の外国籍選手とマッチアップすることになる。しかも選手構成上、竹内のファウルがかさむとA東京は厳しい。外国籍選手を相手にファウルをコントロールしながら対峙することが常に要求される。
「自分がいなくなったらザック(バランスキー)一人になってしまうので。自分の中では『前半でファウルは1個まで』と決めています。今日は最初の1つをすぐやってしまったので、なかなか前半はタフにできなかったです」と竹内は言う。
「絶対的なパワーは、ほとんどの外国籍選手にかなわないので、運動量と頭を使うことで対抗します。分析はコーチ陣がやってくれるので、それに基づいて相手の得意なムーブを意識するようにしています」
得点が激しく動くバスケットボールで、相手のエースを完封するのは非現実的だし、狙う必要もない。竹内の役割はファウルの数をコントロールしつつ、相手を乗せないこと。そして勝負どころになればきっちり抑え込むことだ。
昨日の試合、勝負どころは最初に得点を許した後に引き締めた時、そして終盤に訪れた。第4クォーターの立ち上がり、大量ビハインドを埋めようと必死になるパーマーに対し、もうファウルを気にする必要はなくなった竹内がタフに当たって思うようなプレーをさせず、パーマーは明らかにイラついていた。試合開始直後に1つ、そしてこの第4クォーターの立ち上がりに1つ。竹内は個人ファウル2つだけで試合を終えている。
オン・ザ・コート「2」の時間帯でほぼ常に強いられる、相手のエース級の外国籍選手とのマッチアップについて、竹内は「自分にとっては良いことです。日本代表で国際試合をやればそうなりますし」と受け止めている。「逆にチームの信頼、ガードの外国籍選手を置くという難しい決断をしてくれたコーチに感謝したい。あとはその期待に応えなきゃいけないです」
「自分が選んだ道が最善の道になるよう努力する」
Bリーグ開幕にあたり、竹内は長年在籍した日立からの移籍を決断した。難しい決断ではあったが、アルバルク東京へ移籍する決め手となったのが、外国籍のガードを獲得するというプランだった。
「第4クォーターはどのチームもオン・ザ・コート『2』をしている中で、そこでコートに立てないことは間違いなく自分のプレーの質を落としてしまうと思っていました。その勝負が懸かった場面でコートに立つためには、そういうチームを探さなければいけませんでした」と、竹内は移籍に際した自身を取り巻く状況を語る。
そうして出会ったのがアルバルク東京だ。「ヘッドコーチ(伊藤拓摩)から外国籍のガードを取ると言っていただいて、それが決め手になりました。外国籍選手のその使い方は勝ち負けの核の部分。それを自分に託した、と言ったら大袈裟かもしれないですけど、それだけ信頼してもらったとありがたかったです。本当に一番の移籍の決め手でした」
相手チームの外国籍ビッグマンと互角かそれ以上に渡り合うことのできる日本人選手を確保しない限りは、ギャレットを獲得することはできない。伊藤ヘッドコーチからの話を聞いて、竹内は決断を急いだ。
8月上旬の入団会見から5カ月が経過したが、その決断に後悔はない。「うまく行かないと『もう一つの道はどうだったんだろう』って考えてしまいがちですけど、そこは自分が選んだ道が最善の道になるよう努力するしかないと思っています」
前半戦を終えて、アルバルク東京は大混戦のBリーグ東地区で何とか首位をキープしている。大きく陣容を変えて再出発したチームとしては上々の出来だ。もっとも、優勝のためにはここからさらに向上する必要がある。竹内は開幕からここまでを「野望だったり遂行力だったりが、まだ足りていなかったのかなと」と言う。
「ただチームに言われたことだけをやっていた部分がありました。チームが勝っている状況、オールジャパンが控えている中で自分を出し過ぎることは良くない、とか。結局オールジャパンでは優勝できなくて、何か変えていかなければいけない。ここから5月まではタイトルが決まる試合はないわけです。そこでもっと我を出そうと決めました」
まるでパーカーとのマッチアップで、ファウル数を意識しながら丁寧に振る舞っていた前半から、そのコントロールから解き放たれてタフに行く終盤へのプレーの切り替えのようだ。シーズン後半、竹内は自分を信じてくれたチームに成功をもたらすために、野望や遂行力を遠慮なく発揮しようとしている。
「自分は外から来た選手ですけど、自分の色をもっと出していくことが必要なことだと思います。それは勝負の懸かった場面で出るだけじゃなく、コートに出ている時に何ができるか、そこで自分の野望を出していくことが特に今は必要だと思っています」
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