ビクター・ウェンバニャマ

マブスとの接戦を落とすも「早く次の試合がしたいよ」

今年のドラフト全体1位指名でスパーズに加わったビクター・ウェンバニャマが、マーベリックスとの試合でNBAデビューを果たした。

これから長く続くであろうNBAキャリアで最初に起きたのは、サンアントニオの観客による大歓迎だった。しかし、次に来たのはファウルトラブルで、第1クォーターで2つ、コートに戻った第3クォーターに立て続けに2つのファウルを犯し、第3クォーター終了時点で15分しかコートに立っていなかった。

第4クォーター開始から投入されるも、たった30秒で個人5つ目のファウルを犯し、すぐにベンチに引き返す羽目に。それまでに6得点4リバウンド2アシスト2スティールを記録していたが、『物足りない』という印象を誰もが抱いただろう。それでも第4クォーター残り7分、5点ビハインドの場面で再びコートに送り出されたウェンバニャマは、人々の印象を塗り替えてみせた。

次にファウルすれば退場という状況でディフェンスでの激しさはセーブせざるを得なかったが、激しい接触をしなくても彼が長い腕を伸ばせばシュートを打つ選手にはプレッシャーがかかり、シュートは落ちる。これでマーベリックスの攻めのリズムを狂わせると、オフェンスではアグレッシブに攻めた。

最後までファウルアウトになることなくコートに立ち、ラスト7分でチームが挙げた15得点のうち9得点を決めたウェンバニャマは言う。「イライラした感情はあったかもしれないけど、チームメートに良い影響を与えるためにもそれをコート上では見せたくはなくて、常に前向きでいたかった。だからベンチに座っていた時も、自分ができる最高のプレーをイメージしていた」

ヘッドコーチのグレッグ・ポポビッチは、ウェンバニャマについてこう語る。「ファウルトラブルは選手にとって最も厳しい状況の一つだ。試合に出たり引っ込んだりを繰り返してリズムがつかめない。それでも最後の7分間で何事もなかったかのようにプレーした。そこに彼のすごさがある」

残り7分の時点でスパーズは5点のビハインドを背負っていたが、ウェンバニャマが普通の選手ならタイミングが合っていないであろうパスをアリウープで沈める衝撃の一発と、躊躇なく放つ3ポイントシュートでマブスに肉薄。トレ・ジョーンズのアシストからダンクを決めて、投入から2分と少しで逆転に成功した。

しかし、接戦で迎えた最終盤でモノを言うのは経験の差だ。カイリー・アービングが、ルカ・ドンチッチが確実にシュートチャンスを作っては得点を重ねていくマブスとは対照的に、スパーズはジェレミー・ソーハンとケルドン・ジョンソンが強引に突っ込んでのターンオーバーを連発。最終スコア119-126でスパーズは開幕戦を落とした。

ポポビッチは「遂行能力を上げる必要がある」と言うが、ここ数年でそうだったように焦ってはいない。「カイリーやルカのように、ただボールを託せばやってくれるチームじゃない。我々はチームとしてボールを動かすことを学ばなければいけない。それはこれからだ」

ウェンバニャマも、ここから学んで一つずつ成長するつもりだ。「フラストレーションは溜めないようにしたい。まだシーズン最初の試合なんだ。これから映像を見て、コーチと僕らで学んでいく。成長に必要なことは何だってやっていくつもりだ」

開幕戦でスパーズとウェンバニャマが見せたのは、すさまじいポテンシャルと、今はまだ成熟にはほど遠いという現実だ。ただ、ここからスパーズもウェンバニャマも右肩上がりの成長を続けていくだろう。試合後の会見でウェンバニャマはこう言った。「最終的にどこに落ち着くかは別として、できる限り多くの試合に勝ちたい。早く次の試合がしたいよ」