ジョーダン・プールの得点力よりポールの正確性を選択
いよいよ開幕を迎える2023-24シーズンのNBA。ブラッドリー・ビールを加えてチームを大改革したサンズと、そのビールのトレードに絡んでクリス・ポールを獲得したウォリアーズが開幕戦で顔を合わせます。今回の移籍ではサンズから見限られた感の強い38歳のクリス・ポールにとっては、世界が注目する開幕戦で自身の価値を示す絶好の機会でもあります。
昨シーズンのポールは自慢のプレー精度に陰りが見え、総合的なシュート効率を示すTS%が55.5%に留まりました。これはキャリア2年目の2006-07シーズン以降で最低、つまり16年も下回ることのなかった数字で、プレーオフになると弱点として狙われるかのように「シュートを打たされる」シチュエーションも増えました。その一方でアシスト/ターンオーバー率4.60はキャリアハイに並ぶ高水準で、シュート以外は変わらぬ正確さを誇示しています。
サンズがポールより得点力の高いビールを選んだのに対して、ウォリアーズはジョーダン・プールの得点力よりもポールの正確性を選んだことになります。これは両チームのトレードの狙いを示しています。
昨シーズンのウォリアーズはリーグ4位のTS%に対して、リーグワーストのターンオーバーを記録しており、早い展開の中でもミスを抑える必要がありました。ポイントガードにステフィン・カリーが、起点役にドレイモンド・グリーンがいるにもかかわらず、ポジションと役割が重なるポールを獲得した理由はここにあります。
今オフのウォリアーズはポール以外にもコーリー・ジョセフやブランディン・ポジェムスキーを獲得し、ガードの層を分厚くしました。これまで以上にトランジションを重視し、運動量とシュート能力で戦う姿勢ですが、ポールだけはスローダウンでの組み立てを得意としており、他とは真逆の特性を持つガードです。自分たちの特徴を強くしながらポールで欠点も補う考え方が成功するのか、それともどっち付かずの結果となるのか。これが今シーズンのウォリアーズが成功するかどうかのカギとなります。
また、昨シーズンはカリー、クレイ・トンプソン、プールの3人でチームのフィールドゴールアテンプトの6割を占めていましたが、起点役が増えたからには特定の選手に偏らず、バランスの良いチームオフェンスの構築が期待されます。その一方でボールを持つ時間が減るカリーには、オフボールで違いを作る回数が増えることが想定され、より効率的に得点を奪うことが期待されます。プールという得点源を減らしてもポールのゲームメークが加わることで、エースのカリーが輝きを増し、チームとしての得点パターンが多彩になれば、オフェンス力は向上するでしょう。
ポールのゲームメーク能力を求めたウォリアーズと、個人の得点能力を求めたサンズ。ポールにとっては、自身の能力がチームの勝利に多大な影響を与えることを示したい開幕戦になります。