ペイトン・プリチャード

1年前にはトレード要求「でも、そこから僕は成熟した」

1年前、ペイトン・プリチャードは大きなストレスを抱えて開幕を迎えようとしていた。NBAキャリア2年目の2021-22シーズン、チームのNBAファイナル進出に貢献。ベンチスタートでプレータイムは限られていたが、プレーオフでもレギュラーシーズンと変わらぬ起用法を受けて自分の役割を果たせたことで、次なる飛躍の準備ができていた。ところがフロントはマルコム・ブログドンを補強し、マーカス・スマートにデリック・ホワイトも含めて、ガードには経験豊富な選手が揃った。

大学で長くプレーしたプリチャードは去年の時点で24歳になっており、出場機会が見込めない状況に耐えられなかった。セルティックスにトレードを要求したが移籍はまとまらず、3年目にしてプレータイムが最も少なく、各スタッツも落とす結果となった。

しかし今、4年目の開幕を前にプリチャードの評価は高騰している。今夏のフロントは1年前とは逆に、スマートとブログドンを放出。プリチャードと4年総額3000万ドル(約40億円)の新契約を結んだ。ドリュー・ホリデーという大型補強はあったものの、プリチャードはポイントガードの2番手に浮上している。しかもチーム内部の評価が非常に高く、昨シーズンに13.4分だった出場時間は大幅に伸びることになりそうだ。

「とにかくプレータイムが欲しかった。チャンスを与えてくれるならどのチームでもいいと思っていた。当時はいつ試合に出れるのか、何分もらえるのかばかりを気にしていて、本来フォーカスすべき自分自身にフォーカスできていなかった。負けず嫌いな性格もあってキツかったよ。でも、そこから僕は成熟した」とプリチャードは言う。

「プレータイムがない状況は人生で初めての経験だった。ケガ人でも出ない限り出場機会はないだろうと思いながらも、自分自身にフォーカスして、得意な部分はより伸ばし、苦手な部分は克服しようとした。そうやって精神的に成長できたし、プレーも良くなった。今なら自分なりのリズムを保ち、長いシーズンを戦い通せると思う」

ヘッドコーチのジョー・マズーラはブレイク以前のプリチャードをアシスタントコーチで支えた経験があるため、彼のことを誰よりも熟知している。「実績のない若手という立場だと、NBAで才能を殺されてしまうケースが少なくない。ペイトンも厳しい立場に置かれていたが、自分でそれを乗り越えた。今ではこのチームの誰もが彼の努力を認めている」

朝から晩までコートにいて、熱心に個人練習を行い、その合間にはチームメートの練習を手伝う。チーム練習では一番に声を出し、一番ハードワークをする。そんなプリチャードの姿に感銘を受けたのは、チーム始動直前のトレードでセルティックスにやって来たドリュー・ホリデーだ。「オフボールでもオンボールでもプレーでき、自然で楽しいバスケをする。ペイトンは見ていて楽しいし、一緒にプレーすればもっと楽しい選手だね」

セルティックスの先発ポイントガードはホリデーになり、その2番手をプリチャードが務めることになりそうだ。その立場はポイントガードの3番手だった昨シーズンより大きく向上するが、今のプリチャードはそれも気にしていない。「このチームの一員として何か特別なことを成し遂げたい。目標は優勝だけど、フォーカスするのはあくまで目の前の試合だ。そうやって考えられるようになったのは成長だと思う。プレータイムがどれだけあるか分からなくても今は気にしない。その時を楽しみにするようになった」