写真=Getty Images

『ラン・アンド・ガン』の舵取りを任され才能が爆発

ドワイト・ハワードとの決別から1年も経たずして、ロケッツは完全に再生した。

速攻主体の『ラン・アンド・ガン』を提唱する指揮官マイク・ダントーニの下、ジェームズ・ハーデンを中心としたチームは現在33勝12敗で西カンファレンス3位につけている。今シーズンのロケッツは、ハーデンが完全にオフェンスの舵取り役を担い、現在リーグ1位の11.6アシストを記録しているほか、平均得点でも同2位の28.9という数字を残している。

多種多様なテクニックを駆使してドライブを仕掛け、相手からファウルを引き出す巧みな身体の使い方だけではなく、勝負がかかった時間帯でタフショットを決めるクラッチ力もハーデンの武器だ。3ポイントシュートも得意だが、今シーズンはエリック・ゴードン、ライアン・アンダーソンという頼れる『いぶし銀』のシューターを従え、ハーデンがドライブからオープンな選手へのパスを選択する、いわゆるキックアウトからの3ポイントシュート成功という場面も多く見られる。

まさに理想的なチームが出来上がりつつある中、ハーデンを2012年にサンダーからトレードで獲得したGMのダレル・モーリーは、『Bleacher Report』とのインタビューで、「ここまでの選手になるとは想像もしていなかった」と、驚きの告白をしている。

「ハーデンがここまでの選手になると分かって獲得したのかとよく聞かれるんだが、そのたびに『そんなわけないだろ!』という感じで答えている。確かに、他のチームよりは彼を高く評価していたとは思うけどね」

当時のハーデンは、サンダー不動のシックスマンとしてチームを支えていた。今と同様に、ドライブ、3ポイントシュートから得点を決め、チームメートのチャンスメークもこなしていたが、フランチャイズの顔になれるかどうか疑問に思う意見も少なくなかった。

だが、そんな評価をよそに毎シーズン成長し続け、プロ入りから伸ばし続けているトレードマークの髭も手伝い、今では自他ともに認める球団の顔。それゆえに、ハーデンはチームを支えてくれているファンに敬意を払うことも忘れていない。

1月18日に本拠地トヨタ・センターで行なわれたバックス戦で38得点6リバウンド8アシストの大活躍を見せ、111-92での勝利に貢献後、試合で使用したボールにサインを加え、試合当日に100歳の誕生日を迎えコートサイドで観戦していた女性にプレゼントした。

レブロン・ジェームズの強靭さ、ケビン・デュラントのリーチの長さ、ステフィン・カリーの驚異的なシュートレンジ、ラッセル・ウェストブルックの総合力の方が目に留まるかもしれないが、今シーズンのハーデンはベーシックなプレースタイルを『芸術レベル』にまで昇華させ、彼らと同じラインに立った。

ウォリアーズ、スパーズに続き、ハーデンのロケッツが頭一つ抜け出た西の首位争いは、これからますますヒートアップするに違いない。