スクート・ヘンダーソン

個性的なコンビにディアンドレ・エイトンが加わり再出発

鮮烈なデビューで新人王を獲得したデイミアン・リラードのチームになったトレイルブレイザーズは、翌シーズンから8年連続でプレーオフに進み、2019年にはカンファレンスファイナルまで進みました。主力のケガに泣かされたシーズンであっても、リラードさえいれば粘り強い戦いぶりでプレーオフに滑り込むなど、その存在感はリーグの中でも別格でしたが、そのリラードがケガをした2021-22シーズンから風向きが大きく変わり、ここ2シーズンはプレーオフを逃すこととなりました。

代わりにドラフトではシェイドン・シャープとスクート・ヘンダーソンを指名し、リラードやユスフ・ヌルキッチらのベテランと若手有望株をミックスさせたチームを目指しましたが、リラードが退団を要求したことで今回のトレードに繋がりました。

ブレイザーズは『再建のシーズン』が始まりますが、スクート、シャープ、そしてトレードで獲得したディアンドレ・エイトンと各ポジションに核となる選手が揃う、珍しい形での再建スタートとなります。

昨シーズンの前半はコーナー担当のロールプレイヤーとして機能する堅実性を見せながら、リラードが欠場したシーズン終盤にはスコアラーとしてのポテンシャルを遺憾なく発揮したシャープは、万能なウイングエースとして2年目のシーズンを迎えます。高いシュート力と抜群の運動能力に加え、カットプレーやキックアウトの判断能力もあり、一気にリーグ有数のウイングに飛躍する可能性も秘めています。

サイズこそないものの破壊的なスピードとフィジカルを持ったスクートは、メインハンドラーとして暴れ回りそうです。オフボールの能力も高く涼し気なプレーが目立つシャープと、強引にでも押し切っていくスクートは面白い組み合わせのコンビで、柔剛入り乱れた躍動感あるオフェンスを期待したくなります。

この2人に噛み合うタレントとしてエイトンをトレードで獲得したのも秀逸でした。スクリーナーとしてスクートを助け、ゴール下を空けてシャープが飛び込むスペースを作ることもできるエイトンは、献身的な働きが最大の特徴です。個の輝きが足りないことで批判されるものの、多くの地味な仕事を担当できる上、ディフェンスでも堅実なヘルプで助けてくれます。

通常の再建ではドラフト上位指名権を求めた低迷期間が続きますが、意図せぬ低迷がシャープとスクートの指名に繋がり、そして望んでいなかったはずのリラードのトレードでは、対価として足りないポジションを埋めに行ったブレイザーズの一連の流れは驚くほどに良い着地をしたように見えます。異なるポジションで異なる特徴を持ち、相互に補え合える3人は新たなブレイザーズの象徴として、リラードが去った悲しみをあっという間に忘れさせてくれそうです。