狩俣昌也

長崎ヴェルカは、一昨年のB3参入から2️年連続での昇格を達成し、最短でのB1昇格を果たした。そして9月23日から25日にかけて行われた天皇杯2次ラウンドで大阪エヴェッサ、信州ブレイブウォリアーズを相次いで撃破と、初年度からB1で十分に戦える力があることを証明。さらに26日には、日本代表の主力である馬場雄大の電撃加入が発表され、さらなるチーム力の強化に成功した。25日のティップオフカンファレンス終了後、注目度が急上昇中の長崎を設立当初からチームリーダー、司令塔として支える狩俣昌也に開幕に向けた意気込みを聞いた。

「B2プレーオフファイナルの負けが気持ちを奮い立たせる原動力になりました」

——長崎は設立当初から最短でのB1昇格を大きく掲げました。それだけに選手たちには大きなプレッシャーがかかって大変だったと思います。だからこそ、実際に2年でB1行きの有言実行を達成したことで、安堵感による燃え尽きた部分などはなかったですか?

それはありましたね(笑)。B1昇格は僕が長崎ヴェルカに行った理由であり、チームから求められたことです。そして自分に課せられた大きな使命だと思っていたので、それを達成できた時は本当にホッとしました。12年、13年くらいのプロ選手生活の中でも本当に濃かった2年間です。

──燃え尽きた後で心身ともにリフレッシュし、今シーズンに向けて新たな気持ちを作っていく上で、モチベーションになったものはありますか。

昨シーズンの最後はB2プレーオフのファイナルで佐賀バルーナーズに負けて終わりました。そのことが後々になって、すごくイライラしたというか、悔しい思いが増していきました。それが今シーズンに向けて気持ちを奮い立たせる原動力になったところはあります。

――狩俣選手のキャリアを振り返ると、これまでは司令塔として加入したチームのスタイルに合わせていく経験が多かったと思います。それが長崎では創設メンバーとして、コーチングスタッフと一緒にスタイルを新しく作り上げています。これまでと180度変わる役割は大変でしたか。

おっしゃるように、自分は今まですでに作られたものに合わせていく感じでプレーしていました。それを自分から発信していくのは全く違う作業になります。今も感じていますが、とても難しいです。ただ、やりがいはすごくあるので充実感がありますし、35歳になっても成長できているなと感じられる、楽しい部分でもあります。

──外から見ると、フィジカルも変わっていないように見えます。衰えを感じることはありますか。

正直、あんまりないです(笑)。フィジカルに自信を持っています。激しく当たってくる相手に対して経験を生かしてうまく対処したいと思うところはありますけど、同時に真っ向勝負で対抗したい気持ちがあります。また、ベテランですが、フィジカルでもやり合えると若い選手に見せていくことは大事だと思います。なによりも負けず嫌いなので、どの部分でも負けたくない思いが強いです。

──こういった年齢を言い訳にしない、気持ちの強さというのは狩俣選手にとって重要な要素ですか。

闘争心は僕に取って大事なモノです。それにヴェルカもチームカルチャーとして、毎日の練習からしっかり戦って、勝つことにこだわっていくことを大事にしています。だからこそ、ベテランの僕が率先して闘争心を見せていきたい思いはあります。

――創設時から順調にステップアップしている部分として、チームの人気や盛り上がりもあると思います。長崎に対する周囲の変化をどのように感じていますか。

ヴェルカが立ち上がってから年々、チームに対する熱量が上がっていると感じています。街中を歩いていても、いろいろな方が応援してくれますし、認知度が上がってきていると感じるようになっています。それは本当にありがたい気持ちしかないですね。

──長崎の街にヴェルカがどんどん浸透している中、来年秋には大きな起爆剤となる新アリーナが開業予定です。この新しいコートに立ちたいという思いは強いですか。

実際、来シーズンはどうなるのかまだ分からないですが、立てる可能性があることは本当に恵まれていますし、支えてくれている皆さんに感謝しています。あとはしっかり長崎の代表であり、プロバスケットボール選手として子供たちに夢を与えられるプレーをしていきたいです。

狩俣昌也

「早い段階で30勝をクリアし、そこからさらにどれだけ勝ち星を増やしていけるか」

――今シーズンの前哨戦の意味合いもあった天皇杯2次ラウンドでB1チーム相手に連勝し、3次ラウンド進出を決めました。森川正明選手、荒谷裕秀選手、ニック・パーキンズ選手、ジャレル・ブランドリー選手など新戦力がインパクトを残しましたが、彼らの個人技というより、これまで長崎が積み上げてきたスタイルにうまく溶け込んでいる印象を受けました。

相手がどうこうではなく、自分たちがこのオフシーズンに取り組んできたこと、積み重ねた部分をしっかり表現できた、それがすごく大きな収穫でした。自分たちのやっているバスケットボールは、これまでと大きくは変わっていないです。その中で、新しく入ってきた選手たちの良さを生かすことに取り組んでいて、今はその部分の理解を深め合いながらプレーをしている段階です。新しく入ってきた選手たちはみんな得点力を持っているところがすごく大きいと思っています。彼らの加入でシュート力だけでなく、1対1で打開できる力も去年よりも高まっています。そこは今シーズンの大きな武器の一つになります。

――主力となる新メンバーが入ってきても、これまでチーム設立当初から長崎が作り上げてきたスタイルを変える必要はない。そこには確固たる信念と自信が感じられます。

目標とする最短でのB1挑戦を達成できたことで、ヴェルカがチーム立ち上げの時から積み上げてきたモノ、辿ってきた道のりは間違っていなかったという自信になっています。これまで自分たちが大切にしてきたモノを、引き続き信じてやっていきたいです。

――狩俣選手個人としては天皇杯が久しぶりのB1勢との対戦でした。B1のサイズ、プレー強度への適応に苦しんだところはありましたか。

天皇杯の試合に関してはB3でもB2でも、常にB1で戦っている気持ちでプレーをしていたので、特に驚きはなかったです。僕がB1にいた時と同じように、プレーができたかなと思います。だから、久しぶりのB1相手という怖さはなく、楽しみの方が大きかったです。僕自身、この2年間はB1の舞台ではなかったですけど、個人的にすごく成長した自信を持っています。例えばオフェンスではシュートを決め切る力、クリエイトする力を意識してやってきました。その成果を見せたいとプレーしました。

──B1初年度となる今シーズン、チームとしての目標を教えてください。

まず今シーズンのスローガンが『THIS IS”VELCA”』となっています。これがヴェルカのバスケットボールというモノを他のB1チーム、ヴェルカ以外のブースターさんにも見せていきたいです。具体的にはシーズン30勝以上ですが、それは勝率5割が目標ではないです。できるだけ早い段階で30勝をクリアして、そこからさらにどれだけ勝ち星を増やしていけるかにチャレンジしていきたいです。

また、チームが立ち上がった時から『HAS IT!』という言葉があります。これは『HARD』、『AGGRESSIVE』、『SPEED』、『INNOVATIVE』、『TOGETHER』の頭文字を取ったもので、この5つの要素を表現するのが自分たちのプレーです。それができた時は得点も伸びますし、相手を止めることもできます。そして、見ているブースターさんに楽しんでもらえると思うので、この『HAS IT!』を遂行することを大事にしていきます。