補強よりも醸成を、ペース&スペースバスケットで挑む
チャンピオンシップ上位進出を狙ったショーン・デニス体制2シーズン目は、2年連続で初戦敗退。勝負に「たられば」は存在しないが、名古屋ダイヤモンドドルフィンズの2022-23シーズンは、外国籍選手やアジア枠選手の相次ぐケガに悩まされたシーズンであったことは疑いようがないだろう。今オフは日本人選手全員を含む10選手と契約継続。これはデニスヘッドコーチのバスケットを選手・フロント共に信じていることへの証左に他ならない。
名古屋Dのバスケットといえば、リーグ3位の攻撃回数とリーグ1位の速攻による得点割合を誇るハイペースバスケット。そして、味方同士が適切な距離を保ちながら連動して動き、オープンショットを高確率で決めるペース&スペースバスケットだ。スペーシングに寄与しながらも、平均19得点(3ポイントシュート決定率41%、ペイントエリアでのシュート決定率は76%)を挙げたコティ・クラークの移籍は大きな出来事であったが、オーストラリアNBLで平均17得点を挙げたロバート・フランクスと、同じくNBLで平均11得点を挙げたブラジル代表センターのティム・ソアレスを獲得。共に3ポイントシュートを35%以上の確率で決められるため、名古屋Dのバスケットにはマッチするだろう。さらに、チーム力を上げるピースとして千葉ジェッツから3&Dプレーヤーの佐藤卓磨を獲得した。磐石の体制に見える名古屋Dだが、代表戦でフランス代表のルディ・ゴベアを1対1で守った張本天傑と、「エサ神」ことスコット・エサトンが開幕前にインジュアリーリスト入りし、体重138kgのジョシュア・スミスを急遽獲得と若干の不安要素も。リーグ有数のハイペースバスケットを軸としつつ、3-2から2-3へと変容する難解なゾーンディフェンスを踏襲するのか、もしくは全く違う戦略で戦うのかは注目すべきポイントの一つとなるだろう。
ロスターが記録したスタッツを計算すると、3ポイントシュート試投割合が36%まで上昇。ハイペースなオフェンスが継続され、速攻による得点が横ばいであるとするならば、ハーフコートオフェンスにおいては3ポイントシュートで終わるポゼッションが増えるだろう。昨シーズンと同様にゾーンディフェンスを多用する場合は、相手に3ポイントシュートを打たれるシチュエーションが多くなることが予想される。マッチアップゾーンに切り替えながらコンテストするといった連携も必要になるだろう。
所属選手一覧
『FP(ファンタジーポイント)最多日本人選手』
※FP(ファンタジーポイント)は、選手の活躍度合を計る指標となるポイント。各選手が実際の試合で記録した成績に応じて算出される。
齋藤拓実
昨シーズンは平均11.0得点、6.9アシストというスタッツを残し。得点とアシストのダブル・ダブルを3度達成した名古屋Dのエース。名古屋Dのオフェンスはこの選手のピック&ロールから始まるといっても過言ではない。ピックを使った瞬間にトップスピードに乗るクイックネスは抜群で、スネークドライブからのノールックパスはもはやお家芸。私が個人的に計測しているPER(出場1分あたりのプレー効率性)ランキングでも日本人選手第3位に入っている。
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【注目選手】
ロバート・フランクス
昨シーズン所属したアデレード36ersでは、42試合中41試合で先発出場し、平均17.6得点を記録。得点期待値(その選手でオフェンスが終わった際の平均得点)は1.03と1を超え、チームポゼッションの実に4分の1が彼の攻撃で終わるというエースプレーヤーだった。基本的にハイポスト付近で仕事をする選手であるものの、ドライブと3ポイントシュートも得意としており、移籍したコティ・クラークのような活躍が期待できるだろう。
ティム・ソアレス
昨シーズンはプエルトリコリーグで24試合、オーストラリアNBLで39試合に出場したストレッチビッグ。ディフェンスがピック&ロールに対してアグレッシブに仕掛けた瞬間にクイックロールしてインサイドで加点したり、下がり気味のディフェンスに対してポップアウトから3ポイントシュートを打ったり、速攻の先頭を走ったりと、ポストアップ以外からも柔軟に得点ができる。ストレッチするがゆえにリバウンドのスタッツこそ低めであるものの、名古屋Dのバスケットにマッチする可能性が高い選手だ。
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