宮崎早織

PG2人体制で負担増も準備万端「しっかり結果と成果を残したいと思います」

アジア競技大会に臨む女子バスケットボール日本代表が9月21日、公開練習を行った。これまでアジア競技大会といえば、ここ数大会はワールドカップとほぼ同じタイミングで行われていたこともあり、代表経験の少ない、実質的にはBチームのようなメンバーで臨んでいた。しかし、今回はアジア競技大会が新型コロナウィルスの影響で1年延期となったことで、ワールドカップと開催時期がずれ、来年2月に予定されているパリ五輪最終予選に向けた貴重な実戦機会であることから、フル代表で参加することになった。

今回の対戦相手を見ると、一番のライバルは開催国の中国だ。6月末から7月頭にかけて行われたアジアカップで、日本は決勝で中国に71-73と競り負け、大会6連覇を逃したのは記憶に新しい。そして、今大会の中国はアジアカップを欠場していた200cmのリー・ユエルが復帰し、205cmのハン・シュとのツインタワー復活など、3カ月前のチームよりも強力になったと予想されている。

一方の日本代表はスペインリーグ挑戦中で不在の馬瓜ステファニーに加え、エースガードの山本麻衣も脳震盪で欠場と、中心選手を2人欠いている。また、恩塚亨ヘッドコーチ体制での代表初参戦が期待された町田瑠唯も故障で不参加となっており、ポイントガードが手薄な状況だ。それだけに、恩塚体制が発足してからずっと代表に選ばれ続けている宮崎早織への期待はより大きくなっている。

星杏璃に川井麻衣と、ボールプッシュやハンドラーの役割もこなせるコンボカード的な2番ポジションの選手はいるが、今回の代表において純粋なポイントガードは宮崎と本橋菜子のみ。この状況を宮崎は、「2人(町田と山本)がいないとしんどいです。たくさんガードが選ばれていると思って合宿に来たら、『いないんかーい!』となりました(笑)」と、冗談を言いつつ、心身ともに出番が増えることへの準備はできている。

「練習でも交代がいないので、ずっと本橋さんと2人で頑張っています。仕事が増えて体力的に大丈夫かなと不安はありますけど、その中でしっかり結果と成果を残したいと思います」

宮崎早織

アジアカップでの忘れられない表彰式の光景「絶対に次は喜ばせないと思いました」

アジアカップの時と比較すると、今大会の代表チームは強豪相手に露呈したボールムーブの停滞を改善するため、攻撃の起点としてポイントガードに大きく依存する形からの脱却を図っている。この試みに宮崎は好感触を得ている。

「アジアカップで優勝できなかったのは悔しかったですが、得たものはたくさんありました。課題としてオフェンスが停滞してしまったところを、アジア競技大会では減らしていきたいです。2番ポジションに星や東藤(なな子)とスラッシャーの選手たちがいて、ポイントガードがディナイされてボールをもらうのが難しくなった時は、彼女たちがアタックして守備を切り崩していけます。練習をやっていて1番だけでなく、2番や3番の選手がプレーコールをして遂行できるのはすごく良いと思います。大会でもそれを続けていきたいです」

また、守備面では個ではなく、よりチームで守る意識を徹底しないといけないと続ける。アジアカップ決勝で、日本は髙田真希が個の力でハンをよく抑えていたが、それでもファウルなどで高田がベンチに下がると一気に失速。結果的にリズムに乗らせてしまい、26得点を与えてしまったことが大きな敗因となった。

宮崎はこう語る。「1対1️でしっかり守ることはすごく大事ですけど、周りの選手も嫌がるようにプレッシャーをかけないといけないです。アジアカップの時は、(相手のセンターに対して)リツさん(髙田)だったり、マークする選手だけに任せてしまったところがありました。ドリブルをついている時に、どれだけちょっかいをかけられるかなど、そこは考えています」

アジアカップの開催地は中国人の移民も多いオーストラリアのシドニーで、決勝戦の会場は中国ファンでほぼ埋まった完全アウェーだった。その中で日本は最後まで食い下がったが届かず、会場全体の祝福を受けて勝利の喜びを爆発させる中国の選手たちの姿を見せつけられた。

宮崎は「燃えました。絶対に次は喜ばせないと思いました」と振り返る。また、決勝では試合終盤に2本連続で林咲希へのアシストを記録し、残り1分半で同点に追いつく立役者になるなど、8得点4アシストと活躍したが、プレータイムは伸びなかった。それがモチベーションの一つになっている、と宮崎は言う。「(アジアカップ決勝は)プレータイムが10分ちょっとだったので、もっと信用してもらえるように努力しないといけないです。アジア競技大会はアジアカップで優勝できなかった借りを返す。やってやるって思っています」

今大会は中国で開催され、アジアカップ以上に会場は中国への応援一色となるが、この環境で勝つからこそリベンジ達成となり、パリ五輪最終予選への大きな弾みとなる。そのためには今回のポイントガード事情を見れば宮崎の活躍が大きな鍵となってくるのは明白だ。また、フォワードやセンター陣は、どうしても守備への負担が大きくなるからこそ、アジアカップ2021の中国との決勝戦で26得点11アシスト7リバウンドを挙げた彼女の再びのハイパフォーマンスに期待したい。