指揮官も絶大な信頼を置く不屈の精神「このメンバーはギブアップしない」
FIBAワールドカップ2023で熱戦を繰り広げている日本代表はベネズエラ代表に86-77で勝利を収め、アジア1位でのパリ五輪出場へと王手をかけた。第4クォーターで33-15と圧倒する見事な逆転勝利を飾った日本代表だが、逆に言えば第3クォーターまでは自分たちのやるべきプレーを遂行し切れないストレスが溜まる時間帯が続いていた。
トム・ホーバスヘッドコーチは、「ハーフタイムはすごい怒ったよ。前半、ウチのバスケを全然やっていなかったです。相手のプレッシャーディフェンスはありましたけど、みんなの役割がおかしくなっていました」と第3クォーターまでの戦いぶりを振り返る。
だが、指揮官は、前からプレッシャーをかけ続けることで最終的には自分たちのペースに持ち込めると信じていた。「ベネズエラは(2人が故障で離脱して)10人と少なかったです。ウチが40分プレッシャーディフェンスを続け、速いペースを作っていけば相手が疲れるかなと思いました。実際、第4クォーターの相手は疲れていたと思います」
そしてホーバスヘッドコーチは「このメンバーはギブアップしない」と選手の屈強な精神力を称えた後、第4クォーターの逆転劇をもたらした要因を語る。「日本のスタイルは、2人くらい熱くなったら相手がすごいプレッシャーを受けます。渡邊(雄太)がちょっと熱くなって、マコ(比江島慎)が熱くなりました。(2人の3ポイントシュートが入ることで相手のディフェンスが外に広がり)そこから河村(勇輝)がペイントアタックできるようになり、いろいろとできました」
この展開は98-88で勝利したフィンランド戦と同じだ。フィンランド戦では河村、富永啓生の3ポイントシュートが爆発。その結果、相手は外角シュートを警戒せざるを得なくなり、ゴール下に生まれたスペースを突いたジョシュ・ホーキンソンが第4クォーターだけで12得点と大暴れだったのは記憶に新しい。
「みんなのエネルギーをもらっています。声援がなかったら勝てなかったです」
チーム全体のスタミナでいえば、日本はベネズエラより有利な状況にあったが、一方でビッグマンに限っていえばタイムシェアをせず渡邊、ホーキンソンがほぼフル稼働の起用法で不安はあった。実際、この試合でも渡邊は38分、ホーキンソンは35分33秒もプレーしている。だが、わずか4分27秒のプレータイムだったが、「(ホーキンソンと)交代した時、川真田が良い仕事をやってくれました」と指揮官は控えセンターである川真田紘也の繋ぎの貢献は大きかったと語る。
また、相手のベンチワークにも助けられたと明かす。「ジョシュが疲れてきたら、タイムアウトを取る予定でした。ただ、ウチが勢いを作ったので、それを止めようと相手のコーチがタイムアウトを取ってくれました。それはすごく助かりました」
そしてあらためてホーバスヘッドコーチは、この日も満員となり日本代表に声援を送り続けた沖縄アリーナの雰囲気への感謝を強調する。「オリンピックの時はお客さんがいなかったです。今回は熱いアリーナになってみんなのエネルギーをもらっています。本当に最高でした。この声援がなかったら勝てなかったです」
いよいよあと1勝でパリ五輪出場が決まる。ホーバスヘッドコーチは「私たちは学んでいる最中で、今も良くなり続けているところです。この経験は選手たちにとって本当に素晴らしいモノとなります」と成長具合に大きな手応えを感じている。今回の劇的勝利で日本代表は、さらにチーム力を高めることができた。
だが、明日のカーボベルデ戦に向け「ワールドカップに簡単な試合はないです」と気を引き締めている。溢れんばかりの情熱、そして的確に状況を分析する冷静さを兼ね備えた指揮官が、日本バスケットボール界に新たな金字塔を打ち立ててくれることをみんなが信じている。