河村勇輝

「自分の良さを消してくるディフェンスがたくさんあったと思います」

FIBAワールドカップ2023、男子日本代表はグループリーグ最終戦でオーストラリア代表と対戦した。アップテンポなバスケットボールを展開し自分たちの持ち味を発揮できたが、サイズとスピードに加え巧みなパスワークを備えたオーストラリアの猛攻を食い止めることができなかった。ディフェンスが崩壊したことで89-109で敗れ、グループリーグ1勝2敗で2次ラウンド進出を逃した。

この試合、河村勇輝は切れ味鋭いドライブでオーストラリアの守備を切り崩し、7アシストを記録と攻撃の起点としての役割を果たした。しかし、フィールドゴール8本中1本成功の3得点とシュートは不発に終わり、25得点を挙げたフィンランド戦のようなゲームチェンジャーにはなれなかった。

「やっぱり、本当に強かったなという印象はあります。FIBAランキング3位は伊達じゃないです。ディフェンスの強度に加え、オフェンス、ディフェンスともに連動性があって遂行レベルが高いです」

河村はこうオーストラリアの印象を語ると、「先発のポイントガードとして、ゲームの入りで相手に先に流れをつかませてしまったのは実力不足でした」と続けた。

フィンランド戦での河村はNBA屈指の若手フォワードであるラウリ・マルカネンを相手にしても、スピードのミスマッチを生かした1対1からレイアップやステップバックの3ポイントシュートを決めるなど、大暴れだった。しかし、今回はオーストラリアの徹底マークに遭い、本来の実力を発揮できなかった。

「ディフェンスの強度はフィンランド以上だったと思います。スイッチした後の相手ビッグマンのディフェンスも、ドライブに関してなどいろいろな対策をされました。自分の良さを消してくるディフェンスがたくさんあったと思います」

河村勇輝

「劣勢になっても特別なことはしないで、自分たちのやることを貫き通すだけです」

また、河村はオーストラリアがチーム全体で日本の3ポイントシュートを抑えにきていたと感じ、司令塔として違った対応をするべきだったと語った。「オーストラリアはすごく自分たちの3ポイントシュートを警戒し、ドライブを仕向けるような場面が多かったと思います。ドライブで切れ込んだ後の判断で良くなかった部分があり、そこは悔しい限りです」

20点差での大敗と力の差を見せつけられたが、一方で東京五輪の銅メダルチームを相手にしてもポジティブな部分はあった。第3クォーターには、持ち味のアップテンポなバスケットボールから大量35得点を奪い、後半に限れば54-52とわずかだが上回った。自分たちのやるべきスタイルを継続できれば、世界を相手にしても対抗できると河村は自信を深めている。

「(初戦で敗れた)ドイツ戦、今回のオーストラリア戦と、負けた2試合でも後半に限れば勝っています。自分達のやるべきことを、ブラさずにやり続ける大切さは今大会を通して感じています。やり続けることで、勢いに乗った時には(世界の強豪を相手にしても)アンストッパブルなチームになれます。劣勢になっても特別なことはしないで、自分たちのやることを貫き通すだけです」

日本はグループリーグ3位となり、2次ラウンド進出を逃したが、2試合の順位決定戦がありワールドカップは続いていく。昨シーズンのBリーグでのパフォーマンスが示しているが、河村は相手の対策を乗り越え続けることでレベルアップしてきた。今回のオーストラリアの徹底マークも、彼のさらなる進化の糧となるはずだ。

「この高いレベルでいろいろなことを経験できています。これも良い経験だったかなと思います」。今回の経験を生かした河村が、フィンランド戦と同等、もしくはそれ以上の大暴れを順位決定戦で見せてくれることに期待したい。