代表招集を告げる電話を受けた時の反応は「まさかトレードか!?」
ウォーカー・ケスラーはジャズでのNBAデビューシーズンを終えて、アメリカ代表の一員としてワールドカップに出場する。1年前のジャズはドノバン・ミッチェルとルディ・ゴベアのコアを解体したところで、彼もさほど注目されていたわけではない。ところがジャズは良い意味でのサプライズチームとして暴れ回り、プレーオフ進出こそ果たせなかったものの、若手中心の再建チームとしては価値ある1年目を過ごした。そしてケスラーも、エネルギッシュに戦うセンターとして72試合に出場。平均23分のプレータイムを得て、9.2得点、8.4リバウンドと上々のデビューシーズンを過ごした。
そのケスラーにとって、アメリカ代表は子供の頃に夢見た存在からほとんど変化しておらず、現実的な目標ではなかった。代表招集を知らされたのは、オフもユタに残ってチームの練習施設でワークアウトをしていた時。スタッフから「今すぐ電話に出るように」と声を掛けられた彼は「まさかトレードか!?」とパニックに陥ったそうだ。
それから彼は慌ただしく夏のスケジュールを変更した。ラスベガスに集合してチーム練習を開始し、スペインとアブダビを回って強化試合を重ねている。ここまでの感触は上々だとケスラーは言う。
「他のチームはもっと早くからトレーニングキャンプを始めてチームを作っているけど、僕らも良いチームになれると思う。信じられないほど結束力があって、素晴らしいコーチ陣から学び、自分たちのスタイルを作ろうとしている。素晴らしい才能を持った選手たちがいて、みんな無欲でチームを最優先に考えている」
センターの1番手はNBAの最優秀守備選手であるジャレン・ジャクソンJr.で、若くてエネルギッシュだがプレーに粗さも残るケスラーにとって、ジャクソンJr.のバランスの良さと安定感は良いお手本となる。
ケスラーは2番手、と言いたいところだが、実際にはパオロ・バンケロに続く3番手だ。バンケロはプレーメークもできるオールラウンドなタイプで、ケスラーはよりフィジカルでエネルギッシュな『戦う男』だ。
代表が強化試合を始めて、最初の3試合でケスラーのプレータイムは合計7分しかなかった。固まりつつあるローテーションからケスラーは弾き出されたように見えたが、4試合目のギリシャ戦でスティーブ・カーは彼に16分のプレータイムを与えた。「国際試合はフィジカルな展開になることが多い。そういう時は彼が必要になる」という指揮官の期待に応え、ケスラーは7得点5リバウンド1アシスト1ブロックと結果を出した。
ジャクソンJr.は絶対的な信頼を勝ち取っており、カーが好むスモールラインナップではバンケロが起用される。アメリカ代表が順風満帆に大会を勝ち進んでいけば、ケスラーの出番はそう多くないだろう。相手の勢いを身体を張って食い止めなければならない時、ジャクソンJr.のファウルがかさんだ時。そんなピンチの場面でケスラーが必要となる。
それでも、彼は物事を複雑には受け止めていない。「歴史的なコーチの下で、NBAのトッププレーヤーと一緒にプレーする。彼らから学びつつ、国際大会で自分に何ができるかを試す。とにかく一つでも多くのことを吸収したい。僕がチームUSAから学べることは信じられないほど大きいんだ」
「今は毎日がとても楽しい。このチームには信じられないほどの才能が集まっている。11人、言わせてもらえば僕も含めて12人のタレントが揃っていて、みんな力を合わせ、正しい方法でプレーしているんだ。楽しくないわけがないよ」
最後の強化試合となったドイツ戦で、彼に出場機会は回ってこなかった。まだまだ粗削りで、国際大会の経験もない。バム・アデバヨかドレイモンド・グリーンが代表入りを固辞していなかったら、ケスラーにチャンスが回ってくることもなかっただろう。しかし、だからこそ伸びしろは大きく、この代表活動で得られる新たな経験は彼を大きく成長させるはずだ。