エースの孤軍奮闘も、チームを勝利に導けず
女子の準々決勝4試合が行われたウインターカップ4日目。また一人、大会注目選手が姿を消した。奥山理々嘉を擁する八雲学園はベスト4を懸け、大阪薫英女学院と対戦したが、序盤のビハインドを最後まで覆すことができず、終盤に崩れ70-88で敗れた。
立ち上がり、強度の高い大阪薫英のディフェンスを前に八雲はミスを連発。高確率でシュートを決められ、前半を13点のビハインドで折り返した。そこから奥山を中心に反撃を開始し、6点差まで詰め寄る。最終クォーターのファーストシュートを沈めて4点差まで詰め寄ったが、反撃はここまでだった。
大阪薫英は追い上げられてもここで崩れず、メンタル面で八雲を上回った。イージーシュートを落として焦る八雲を尻目に、一人ひとりが強気にドライブを狙い、フリースローとレイアップで点差を広げていった。
奥山は必死に仲間を鼓舞したが、リカバリーすることはできなかった。「みんなコンディションも悪くて、苦しい顔をしてたので、ここで頑張るよっていう言葉を掛けたんですけど、それをまとめられなかったです。キャプテンとしての仕事はしたんですけど、プレーでもっとまとめられたら、もっと良いゲームができたし、今頃は笑っていたのかなって……」
奥山が言う「プレーでまとめる」というのは、スコアを挙げるということではなく、周りを生かすということだ。高木優子監督も「気負いすぎだし、自分でやりすぎ。自分に寄っているからパスをさばけばいいのに、打ってしまった」と奥山のプレーを評した。
また『ハイスピードバスケ』のスタイルを取る八雲だが、大阪薫英の遅攻に手を焼き、得意のトランジションバスケを体現できなかったのも敗因となった。「時すでに遅し。ディレイドされるから詰まっても返されちゃうんだよね。逆転できる感じはあったんだけど、良い場面で決めきれなかった」と高木監督は試合を振り返る。
「スーパースターになってくれることを期待します」
奥山は3試合連続40得点オーバーとなる44得点9リバウンドを記録し、大黒柱としての仕事は果たした。だが奥山以外に2桁得点を記録した選手はおらず、いつも以上に点数が偏った。ダブルチームを織り交ぜた徹底マークを受けたことで判断力が失われ、周りを生かすことができなかった。
「自分自身の1対1にヘルプが来て、決めきれなかったし、ファウルももらえなかったです。自分に寄せてもうちょっと周りを楽にしたかったんですけど、自分へのマークもキツかった中でプレーをしたので、判断力がなかったです」
また、焦りから本来のプレーができなかったことも認めた。「点数が足りなくて、焦って攻めきれなかったところがあるし、そこが課題です」
自身の出来としては、スタッツが示すように及第点以上の出来だったと言える。それでも、誰よりも責任感が強く、チームの勝利を望む奥山だからこそ、反省の弁ばかりが口をついた。
昨年は八雲を過去最高のウインターカップ4強へと導いた奥山だが、最後の冬は準々決勝で敗退となった。通学の時間を練習時間にあてるべく、高木監督の下に下宿するなど、2人は見えない絆でつながっている。そんな恩師に対し、「3年間でたくさんのことを学ばせていただいて、一回りも二回りも成長できました。自分のことを信じてずっと教えてくださったのに、恩返しできなくて申し訳ないです」と奥山は最後まで自分を責めた。
高木監督は敗因を語る際にあえて奥山を名指ししたが、それは誰よりも奥山を理解し、期待しているからだ。以前から「日本代表で活躍したい」と発言していた奥山へ、「スーパースターになってくれることを期待します」と言い残し、高木監督は会場を後にした。
高校バスケはこれで一区切りとなったが、奥山のバスケ人生はこれからも続いていく。