安定した司令塔ぶりでケガ人続出のグリズリーズを救う
グリズリーズはここまで10勝7敗と好スタートを切っている。昨シーズンは故障者続出でケガと個人的なトラブルによる長期欠場が明けたばかりのジャ・モラントが肩のケガで再び長期欠場となったところで戦いをあきらめてしまい、27勝55敗と低迷した。再起を期す今シーズンも、開幕からケガ人が多く、メンバー全員が揃って戦えないにもかかわらず健闘している。
特にポイントガードのポジションではモラントが8試合、マーカス・スマートが7試合しかプレーできていない非常事態だが、それをカバーしているのがスコッティ・ピッペンJr.だ。一昨シーズンにレイカーズでデビューを飾るもインパクトを残せず、昨シーズンに2ウェイ契約で加わったグリズリーズではシーズン後半の16試合で先発も務めたが、必ずしも必要な戦力という評価を得ていたわけではない。
しかし今シーズンは、開幕前に正式契約を勝ち取り(これで空いた2ウェイ契約の枠が河村勇輝に与えられた)、ここまで17試合すべてに出場している。モラント不在の8試合では先発を務めており、1番手でも2番手でもバランスの良い安定したプレーメークでチームに貢献している。
彼の父、スコッティ・ピッペンはブルズ黄金期を支えた名選手で、マイケル・ジョーダンの相棒という立ち位置で試合を決定付ける勝負強さを発揮してきた。しかしピッペンJr.はタイプが違う。勝負どころでビッグプレーを見せるよりも、48分間を通じてリズムを生み出し、仲間を波に乗せてチームを支えるタイプのガードだ。だからこそ、チームメートそれぞれを理解し、チームとして機能させるためには時間が必要だったのかもしれない。
グリズリーズ2年目を迎えた彼は、特にジャレン・ジャクソンJr.やジェイ・ハフ、ザック・イディーといったビッグマンのサイズと力強さを引き出し、彼らを波に乗せることでチームを動かしている。この安定した試合運びのスキルはモラントにはないもので、これからモラントが復帰してもピッペンJr.の価値は落ちないはずだ。
そのピッペンJr.が、現地11月23日のブルズ戦で、個人の勝負強さも発揮できることを示した。フィールドゴール16本中13本成功でキャリアハイの30得点、さらに10アシストでグリズリーズを142-131の勝利へと導いた。
「ここは間違いなく特別な場所だ。父の名前がここに掲げられているアリーナだからね。ここでプレーして30得点10アシストを記録するなんて、夢が実現した瞬間だった」とピッペンJr.は語る。父がブルズで6度の優勝を勝ち取った時期にはまだ生まれておらず、その記憶はない。しかし、幼い頃にNBAプレーヤーとして活躍する自分の姿を思い描く時、その舞台は常に『父親のホームアリーナ』であるユナイテッド・センターだった。
「これは僕だけじゃなく、家族にとっても大きな意味を持つ」とピッペンJr.は言う。「昨日、父さんとここでプレーすることについて話したんだ。『思い切ってやってこい』とアドバイスをもらって、その通りにやったよ」
偉大な父と同じ道は歩んでいないとしても、ピッペンJr.は一歩ずつNBAでのキャリアを切り開いている。成功を重ねて自信が増せば増すほどピッペンJr.のプレーメークは安定感を増し、それがグリズリーズにますます欠かせない要素となるはずだ。