NBA史上初となる得点、リバウンド、アシストの3部門でプレーオフトップの快挙
ナゲッツはヒートとのNBAファイナルを4勝1敗で制し、初のチャンピオンに輝いた。そして、シリーズ5試合で平均30.2得点、14.0リバウンド、7.2アシストを挙げた大黒柱のニコラ・ヨキッチが、当然のようにファイナルMVPに選出された。
ヨキッチはファイナルだけでなくプレーオフを通して圧倒的なパフォーマンスで試合を支配。今回のプレーオフにおいて合計得点(600)、リバウンド(269)、アシスト(190)の3部門でトップに立つNBA史上初の偉業を成し遂げている。
このように個人としてずば抜けた数字を残したヨキッチだが、いつもと変わらず、自身のパフォーマンスについては無頓着だ。彼が大切にしているのは周囲との協調、チームへの自己犠牲でありスーパースターのエゴはない。だからこそ、優勝が決まった直後のコートインタビューで優勝した気持ちを聞かれて次のような言葉が出てくる。「僕たちは、それぞれ自分のために勝利を目指しているわけじゃない。自分たちの周りにいる人たちのために勝ってきたんだ。このチームは本当に素晴らしい人々の集まりだ。僕たちはお互いのことを信じている。チャンピオントロフィーを勝ち取ったことは意味がある。そして僕たちの関係は長く、たとえ引退しても続くものだよ」
近年のナゲッツはレギュラーシーズンでリーグ上位の成績を残しながら、ヨキッチと2大エースを担うジャマール・マレーの故障などもあり、プレーオフでは思うように結果を残せないでいた。それでもヨキッチ、マレー、マイケル・ポーターJr.と生え抜きのコアメンバーを中心とする路線を変更せず。彼らを軸にアーロン・ゴードン、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープ、ブルース・ブラウンといった脇役たちを補強する継続路線を貫いたことが今回の優勝へと繋がった。
ヨキッチは酸いも甘いも嚙み分けてきたこれまでの道のりを振り返りつつ、積み重ねの大切さを強調した。「成功するには数年をかけて、良いことも悪いことも経験する。そして失敗をしたら、原因を理解する必要がある。ジャマールが故障して、プレーオフ初戦で負けたこともある。成功するためにショートカットはない。これは1つの旅路なんだ。その一員になれてうれしい」
シーズンMVP、ファイナルMVP、今回のリーグ初の快挙など、ヨキッチは個人で得られる栄光のすべてをつかんだ唯一無二の存在になったと言える。だが、それでも彼のスタンスに変化はなく「成功を収められたのは素晴らしい気分だよ。でも、それがすべてではない。僕にはいろいろと好きなことがある」と言う。
そして今の彼にとって最も大事なことは、一刻も早く母国であるセルビアの自宅に帰ってリラックスすること。優勝パレードが現地15日に予定されていることを知ると、「ノー、僕は家に帰る必要があるんだ」とガッカリした様子を見せるくらいだ。とはいえ、彼は愛するナゲッツファンのためにパレードに参加し、ファンへの感謝を語るだろう。自分の地位が上がっても驕ることはないヨキッチが大黒柱として支える限り、ナゲッツは来シーズン以降もしばらく優勝を狙えるチームであり続ける。