バム・アデバヨ

ヨキッチの得点は止められなくても、プレーメークは止める

NBAファイナル、ナゲッツvsヒートの第2戦は、両チームにめまぐるしく主導権が移り変わる展開となったが、劣勢になった時の精神的なタフさで第8シードから勝ち上がってきたヒートが『らしさ』を発揮。シーソーゲームを制して1勝1敗とした。

立ち上がりに主導権を握ったのは初戦を落としているヒートだった。ニコラ・ヨキッチへのダブルチームを減らしてディフェンスのバランスを保ち、ピック&ロールに冷静に対処してチャンスを作らせない。オフェンスに転じれば初戦で3ポイントシュート9本を放って1本も決められなかったマックス・ストゥルースが大当たり。3ポイントシュートを次々と決めて11点のリードを作り出した。

立ち上がりにリズムをつかめなかったナゲッツは、セカンドユニットで反撃する。ブルース・ブラウンが相手の勢いを止め、ルーキーのクリスチャン・ブラウンがハッスルで流れを呼び込み、ジェフ・グリーンがインサイドを支えるとともに3ポイントシュートも決めて攻守に勢いを与える。一度下がったジャマール・マレーはベンチで冷静になるのではなく、アタックモード全開でコートに戻り連続得点。第2クォーター開始からヨキッチをベンチで休ませている間にトランジションバスケでヒートを圧倒し、この5分間を23-9として劣勢を一気にひっくり返し、57-51で前半を終えた。

第3クォーター序盤は再びヒートの時間帯。試合開始当初は3ポイントシュートで流れを呼び込んだが、今回は泥臭いディフェンスとリバウンドから速攻に持ち込むことで点差を詰める。それでも、このクォーターもナゲッツが取った。第2クォーターの約半分をベンチで過ごして元気のあり余っているヨキッチが、いつものスマートさをかなぐり捨てて個人で強引に押し込み続け、このクォーターに18得点を叩き出してリードを保った。

第4クォーター開始時点で75-83とビハインドを背負ったヒートが、ここから精神的なタフさを発揮して逆境を覆す。慌てることなくディフェンスの強度を上げたヒートに対し、ナゲッツは微妙なファウルを連続で取られたことで意識がジャッジに向いてしまい、集中が途切れてしまった。さらにここでダンカン・ロビンソンの得点力が爆発。第4クォーター開始から8連続得点でオフェンスを勢い付け、ここまでなかなかシュートの決まらなかったジミー・バトラーもついに当たり始め、逆転するだけでなくナゲッツを突き放すことに成功した。

残り3分半で107-95とリードしたヒートだが、最後にまだ一波乱が待っていた。ナゲッツはフラストレーションを溜めて攻守が噛み合わなくなっていたが、追い詰められて吹っ切れたところから、アーロン・ゴードンとマレーの連続3ポイントシュートを皮切りに11-0のランを見せ、残り1分で109-106の1ポゼッションまで肉薄。ナゲッツファンで埋まったボール・アリーナはすさまじい盛り上がりを見せた。

それでもヒートは慌てなかった。それまでの過程でターンオーバーを連発していたものの、最後はバム・アデバヨが落ち着いてファウルを引き出し、フリースローで確実に2点を奪う。ナゲッツはラストショットをマレーに託したが、決まれば同点の3ポイントシュートがリングに弾かれ、ヒートが111-108で勝利した。

ナゲッツのヨキッチはフィールドゴール28本中16本成功で41得点を挙げ、11リバウンドを獲得したが、アシストは4に留まり、ヒートの守備陣はヨキッチの得点は止められなくても彼のプレーメークは止めたことになる。劣勢でも落ち着きを保って粘り強いディフェンスを続け、3ポイントシュートがチームで35本中17本(48.6%)決まったことが勝因となった。

今回のプレーオフで、ナゲッツにホームゲーム10試合目で初めて土を付けたヒート。初戦は93-104のスコア以上に内容に差のある完敗を喫し、非常に苦しいと見られていたが、第8シードからNBAファイナルまで勝ち上がってきた彼らに下馬評は無意味だ。