田代直希

「これまでキングスに関わってきたすべての人たちに感謝したいです」

5月28日、琉球ゴールデンキングスはBリーグファイナル第2戦で千葉ジェッツを88−73で倒し、連勝でチーム初のBリーグ王者となった。

琉球にとって2年連続となる今回のファイナルは、下馬評で言えば富樫勇樹を中心にレギュラーシーズンでリーグ最高勝率の53勝7️敗をマークするなど、圧倒的な強さを見せた千葉Jが優位と見られていた。しかし、琉球は2試合ともにチームの根幹であるタフなディフェンスを我慢強く継続し、自分たちのスタイルを最後まで貫くことで難敵を撃破した。

琉球が悲願のタイトルを獲得できたのは、現在のメンバーの素晴らしいパフォーマンスがあってこそ。しかし、その強さの源となっているのは、40分間を通してのハードワークや自己犠牲の精神が確固たるチーム文化として根付いているから。そして、この文化の確立に大きな貢献を果たした1人がキャプテンの田代直希だ。

2016年から琉球一筋である生え抜きの田代は、琉球のカルチャーの継承において大きな働きをしている。今回のファイナルは2試合ともにプレータイムは約5分に留まったが、彼のコート内外における様々な部分での貢献は琉球の土台となっている。

琉球の歴史を作ってきた田代らしく、喜びのコメントは周囲への感謝から始まった。「たくさんの人たちがキングスでプレーし、コーチをしてくれました。そして、たくさんの人たちが何年もキングスの応援を続けてくれた積み重ねが今年の結果に繋がりました。これまでキングスに関わってきたすべての人たちに感謝したいです」

そして、対戦相手である千葉Jへの敬意を続ける。「シーズンを通して本物の強さを証明していたのは絶対に千葉ジェッツです。連勝記録を作って、リーグ最高勝率を残して、天皇杯に優勝した一番強い千葉を倒せたのは何よりも最高です」

今年の天皇杯ファイナルだけでなく、2度のセミファイナル敗退など、これまで琉球は何度も千葉Jに大舞台で敗れてきた。だからこそ、千葉Jを撃破しての優勝の価値はより輝かしいものになった。「これまで大事な試合ではすべて千葉さんに負けていました。そういった意味で、絶対に立ちはだかる大きな壁でした。乗り越えないと優勝できないと思っていた相手に勝てて、日本一になれたのでうれしいです」

田代直希

「僕には優勝する素質がないかと思うこともありました」

岸本隆一は琉球の歴史を作ってきた田代と同じく、チーム一筋の生え抜きで琉球を支えてきた。優勝が決まった後、その2人が肩を抱えあって歓喜の涙を流していた光景は、琉球ファンにとって胸が熱くなる瞬間だったはずだろう。

「バスケの神様がいるとしたら、特別な一瞬をプレゼントしてもらえたと思います」。田代は今回の優勝をこのように表現した。そして、この喜びを岸本と共有できたことに笑顔を見せる。「隆一とは苦楽を共にしてきて、今だと一番長いチームメートです。彼が難病になって苦しい時期を知っていますが、彼はそれを乗り越えてきました。そんな隆一と一緒にこのタイミングを迎えられたのは特別な瞬間だと思いました」

琉球は西地区6連覇が示すようにリーグ屈指の強豪チームだが、何度もあと一歩で頂点に届かず悔しい思いを繰り返し味わってきた。キャプテンとして、覚悟を持ってチームを引っ張ってきたからこそ、「ずっと優勝を目指していたのにできず、僕には優勝する素質がないかと思うこともありました」と田代は責任を感じることもあったと言う。だが、チームを日本一に導けるリーダーシップの持ち主であることを、この2日間の琉球の戦いぶりが証明した。

そして、あらためてファンへこのようにメッセージを送った。「沖縄の人たちのバスケの熱量は絶対に日本一だと思います。沖縄に優勝カップを持ち帰ることはキャリアを通して絶対に一度はやりたいことでした。それが達成できたのはうれしいです。みなさんが喜んでくれていることを体感することができたら、もっとうれしい経験になると思います」

これから沖縄に帰る琉球は、ファンの人たちへの優勝報告会が待っている。そこでの熱烈な歓声によって、田代の喜びが増すことは間違いない。