レブロン・ジェームズ

ペリンカGMの考える『将来への布石』は不要、レブロンは「今、勝ちに行く」

レブロン・ジェームズはレイカーズの敗退が決まった直後、「バスケットボールを続けていくにあたって、考えることはたくさんある」と語った。死力を尽くして戦ってもスウィープ(0勝4敗)という結果に直面した直後だけに、現役引退を示唆する発言だと大きく報じられたが、本当に引退するつもりがあるのだろうか?

レイカーズのどの選手もこの件について「そんなはずはない」と答えている。レブロンはレイカーズとの契約をあと2年残しており、引退を想定していたはずはない。いくらショックな負けを喫したにしても、40得点10リバウンド9アシストを記録した試合を、現役ラストゲームにするだろうか? いや、長男のブロニーと同じコートに立つ夢を実現するまで、彼はプレーし続けるはずだ。

すべてを出し切り、心身ともに疲れ果た状態で思わず弱音がこぼれたのかもしれないが、彼に『負け犬』としての引退は似合わない。それよりもレイカーズ首脳陣への批判の方がしっくり来る。38歳になったレブロンは今もリーグ最高クラスのパフォーマンスを維持しているが、持続力は落ち始めている。彼はケガの少ない選手で、ケガをしてもすぐに治してプレーし続けてきたが、今はそうはいかない。

スタミナも以前のレベルにはない。それが顕著に出たのがナゲッツとの第4戦で、もう負けられない状況でティップオフからエンジン全開のレブロンは、前半でフィールドゴール13本中11本成功の31得点を記録したが、後半はフィールドゴール12本中4本成功の9得点と失速した。47分56秒というプレータイムの問題ではなく、オフェンスでもディフェンスでもある程度は周囲に任せてセーブする必要があるのに、それができなかった。プレーオフではアンソニー・デイビスがオフェンス面で不調で、若手にボールを託すわけにもいかず、レブロンが燃え尽きるまで突っ走ることになった。その結果があの第4戦だ。

引退発言でかき消されてしまったが、その前にレブロンは興味深い一言を発している。「僕はカンファレンスファイナル進出に喜びを感じない。何度も経験済みだから楽しくはないんだ」

ロブ・ペリンカGMもヘッドコーチのダービン・ハムも、カンファレンスファイナルでスウィープでの敗退を喫したにもかかわらず今シーズンのチームの成長と健闘を称え、「ここまで来たことを誇りに思う」と語った。だが、レブロンは全く別の意見を持っている。若手を育てて数年後に優勝するプランでは彼のタイムラインには合わない。レブロンとデイビスがいる間は将来のことは考えず「今、勝ちに行く」ことに徹するべきだ、というのが彼の考えだろう。

シーズン途中のチーム再編でレブロンが求めていたのはカイリー・アービングの獲得だった。しかしペリンカGMはまず八村塁を獲得し、トレードデッドラインにはカイリーではなくディアンジェロ・ラッセル、マリーク・ビーズリー、ジャレッド・バンダービルトの3人を獲得。この3人はプレーオフ進出を勝ち取るシーズン終盤には大きな貢献があったが、プレーオフになると貢献度は下がった。『プレーオフは別物』と言われるが、そこでは八村がサプライズ的に結果を出しただけで、結果としてレブロンの負担は格段に増すことになった。

トップコンディションでプレーできるのはあと数年なのに、来シーズンも同じことを繰り返されたらたまらない。レブロンはそう考え、ペリンカにメッセージを送っているのではないか。

レブロンは勝ちへのこだわりが誰よりも強く、自己アピールも巧みだ。コービー・ブライアントがやったような『お別れツアー』は絶対にやりたいだろうし、コービーとは違ってそのシーズンにも優勝を狙うだろう。引退はしない、優勝を狙う、というのがレブロンの回答であるはずだ。

1年休んで復帰するのでは、という予測もあるが、彼に1年もの休養は必要ない。1週間も休めば気力を取り戻し、続く2カ月でコンディションを作る。大ケガを負っているのならともかく、足首の捻挫はオフ前半で完治させられる。レブロンが求めるのは常に、数年後の勝利ではなく「今、勝ちに行く」なのだ。

これは気弱な引退宣言ではなく、あくまで優勝を目指すレブロンの闘争だ。オフの序盤、その闘志はペリンカGMに向けられる。カンファレンスファイナル進出に満足するような態度を、レブロンが受け入れるはずはない。