レブロンに新たなモチベーションを沸き起こさせる補強に?
西のカンファレンスファイナルで激突したナゲッツとレイカーズには、第1シードと第7シードに相応しい力の差があった。レイカーズは出来の悪いレギュラーシーズン前半戦の後、トレードデッドラインを前に選手の約半数を入れ替える大改革を断行し、それは上手くいったのだが、82試合を通じてケミストリーを高め、戦い方のバリエーションを増やすとともに成熟させてきたナゲッツとの差は埋まらなかった。
レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスの契約は少なくともあと1年残っており(2024-25シーズンがプレーヤーオプション)、レブロンが『何らかの重大な決断』を下さない限りは、彼らを軸とした新たなチームで来シーズンに臨む。それでも、2月以降に健闘を見せ、カンファレンスファイナルまで勝ち上がった今のロスターは解体となるだろう。ナゲッツとの差は、その決断に十分すぎるほど大きかった。
スウィープでの敗退が決まった直後から、レイカーズの来シーズンのポイントガードはカイリー・アービングになるだろうと言われている。崖っぷちで迎えた第4戦のティップオフ前、アリーナに彼が姿を見せた時点で、それはもう規定路線だったのかもしれない。ディアンジェロ・ラッセルはプレーオフに入ると調子を崩し、ナゲッツとのシリーズでは平均6.3得点しか挙げられずに評価を落とした。ディアンジェロの3140万ドル(約42億円)の年俸が浮けば、あと少しの調整でカイリーをロスターに加えることができる。
今シーズンのカイリーは前半戦をネッツで過ごし、トレードデッドラインでマーベリックスに移籍した。マブスでは全く新しいメンバーと組んだにもかかわらず27.0得点、5.0リバウンド、6.0アシストとリーグを代表するスコアリングガードの能力を披露。さらにプレーオフの経験、レブロンと一緒にプレーした経験もある。
プレーオフを通じてアンソニー・デイビスはディフェンスでこそ圧倒的な力を発揮したが、オフェンスでは好不調の波が大きく、信頼しきれない面があった。レブロンに過度の負担を背負わせないために、他の選手で得点を補いたいところだが、八村塁はサプライズ的な健闘を見せたものの後が続かず、得点面での駒不足は顕著だった。そこでディアンジェロが、2番手のデニス・シュルーダーまで得点を奪えなかったのは大きな誤算だ。
レイカーズはもともと、自分でクリエイトして得点を奪うことのできる攻撃的なポイントガードを好む。その中で、現時点で獲得可能な最高の選手がカイリーだ。キャバリアーズを離れたのはレブロンへの反発からで、その後に在籍したセルティックスとネッツではトラブルメーカーの一面を色濃く出したが、紆余曲折を経てもレブロンとの信頼関係は強い。他のチームはカイリーのバスケ以外の面での不安定さを敬遠するが、レイカーズにとっては格好の補強となる。
スウィープ負けを喫した直後、精魂尽き果てたレブロンからは「バスケットボールを続けていくにあたって、考えることはたくさんある」と弱気な言葉がこぼれた。オフに入ってリフレッシュする彼に、新たなモチベーションを沸き起こさせるようなロスターを作り上げることが、レイカーズの新たな任務となる。