ジョエル・エンビード

ボストンで1勝1敗、それでも内容はセルティックスが上回る

東カンファレンスセミファイナルはセブンティシクサーズが先勝し、セルティックスが追い付いての1勝1敗となりました。ファーストラウンドがスウィープだったシクサーズは休養が十分に取れたアドバンテージを生かして先勝しましたが、内容ではセルティックスが上回っています。

第1戦のセルティックスはオフボールのカットプレーでディフェンスを引きはがし、得意のドライブと3ポイントシュートを組み合わせたオフェンスが機能しました。シクサーズがゾーンに切り替えたことで戸惑うシーンこそあったものの、フィールドゴール成功率は59%と高確率でした。

しかし、5年前のMVPであるジェームス・ハーデンが若返ったかのような圧倒的なプレーで点の取り合いを制しています。シクサーズに来てから初めての40得点オーバーとなる45得点は、ドライブからの正確なジャンプシュートに得意のステップバックと、ディフェンスからするとノーチャンスなプレーばかり。タフショットでも打ち切り決め続けたことで、チームとしてのターンオーバーが6つのみとミスの少ないオフェンスで高確率のセルティックスに勝ち切りました。

迎えた第2戦は今シーズンのMVPであるジョエル・エンビードが戻ってきましたが、今度はセルティックスのターンオーバーが6つのみで、51本の3ポイントシュートを放って快勝しました。エンビードには5つのブロックを食らったものの、ゴール下で待ち構えていても怖がることなく強気にアタックしつつ、ヘルプディフェンスに対して的確にキックアウトを積み重ねました。

エンビードにマッチアップされている関係上、ワイドオープンになるアル・ホーフォードの3ポイントシュートの確率が悪かったこと、ファウルトラブルのジェイソン・テイタムが7得点に終わるなど計算外もあったものの、ディフェンスの動きを完全に読み切っており、シクサーズが守り方を大きく変えない限りは延々と同じことが続きそうにも見えます。

セルティックスのディフェンスは第1戦で苦労したハーデンへの対処方法も見直し、ハーデン対策のセオリーである左手側を守るよりも、身体の正面に立った通常のスタンスに近づけて守りました。これは第1戦でハーデンが左手側でのコンタクトでディフェンスを下がらせてスペースを作り、右後方に下がるステップバックを多用したハーデンのプレーに対するアジャストです。実際にマルコム・ブログドンがハーデンのシュートを止めたシーンでは、正対してスペースを作らせなかったことで手が届いた形でした。

またエンビードに対しては、フィジカルな対応でリングから遠ざけていくディフェンスを徹底しました。特に目立ったのはエンビードよりも15cmも小さいグラント・ウィリアムスが、高さではなくフィジカルと運動量でエンビードに何もさせなかったことで、ハードワークの差を見せつけました。セオリー通りの対応ではありますが、ここまで完璧に仕事を遂行したことは称賛に値します。

2試合を通してシクサーズのディフェンスは全く機能しておらず、このままではセルティックスのシュートミスを待つくらいしか改善の見込みがありません。点の取り合いの方がチャンスがありそうですが、個人技での突破が中心にもかかわらずハーデンとエンビードのパフォーマンスが不安定で、オフェンスの組み立てに困っています。完敗したからこそ大胆な手も打ちやすいだけに、シクサーズがどのようなゲームプランを立ててくるのか、ロードで1勝1敗は悪くない結果だけに、気持ちを切り替えてホームでの第3戦に臨みたいところです。