綿貫瞬

終盤のゾーンプレスに苦しむも大量リードを生かして逃げ切り、残留へ価値ある連勝

4月23日、新潟アルビレックスBBがホームで富山グラウジーズを迎え撃った。第1クォーターから確率良く外角シュートを決めると、最後まで内と外でバランス良く得点を重ね、第4クォーターの富山の猛追を振り切り94-89で勝利した。オーバータイムにもつれ込んだ前日に続き激闘を制した新潟は、B1残留への望みを繋いでいる。

この試合、富山はインサイドの要であるジョシュア・スミスが前日の負傷退場を受けて欠場。このサイズ不足を補うべく、富山は立ち上がりから新潟の外国籍選手を徹底マークした。だが、これによって生まれたマークのズレを突いた新潟は、澁田怜音が第1クォーターで3ポイントシュート3本中3本成功とオープンショットをしっかり決め切る。チーム全体でもこのクォーターで9本中6本成功と、いきなりの長距離砲爆発で主導権を握る。さらにこれで相手ディフェンスの意識が外に行かざるを得ない状況になると、コフィ・コーバーンがゴール下にアタックする隙のない攻めで28-13とビッグクォーターを作った。

第2クォーターに入っても新潟の勢いは続く。富山がマイルズ・ヘソン、ノヴァー・ガドソンの外国籍2人に偏り過ぎたシュートセレクションとなったことにも助けられ、粘り強いディフェンスを継続し、リードを19点に広げてハーフタイムを迎える。後半に入ると、富山は前から激しく当たるゾーンプレスを仕掛けるが、新潟は冷静に対処することで大量リードをキープする。しかし、第4クォーターに入ると状況は一変した。富山のプレスに対して徐々に受け身となってボール運びで時間がかかり、リズムを崩すことでミスやタフショットが増えていった。この結果、富山にトランジションを出され、失点がかさんでいく。

残り7分49秒で20点あった新潟のリードは、残り2分半には5点まで一気に減ってしまう。だが、このピンチで新潟は大黒柱のロスコ・アレンが3ポイントシュートを沈めて富山の勢いを食い止める。さらにアレンの時間は続き、残り1分にはリードを再び2桁に戻すダメ押しの3ポイントシュートを沈めて辛くも逃げ切った。

この試合、抜群の勝負強さを見せたアレンは25得点11リバウンド10アシストのトリプル・ダブルを記録。また、澁田が3ポイントシュート8本中5本成功の17得点3アシスト、遠藤善が14得点3リバウンド3アシスト2️スティールと活躍した。

綿貫瞬

「負けが許されない試合を勝ち切れたのは、チーム力が上がっているから」

また、スタッツ自体は6得点5アシストと3人に比べると地味だが、綿貫瞬のパフォーマンスも光っていた。テンポよくパスを散らしてボールムーブを活性化させ、堅実なゲームメークで大量得点を演出した。また、昨日の第1戦でもここ一番でオフェンスリバウンドに飛び込んでチップし、セカンドチャンスに何度か繋げるなど、5得点3アシスト2リバウンドのスタッツ以上のインパクトを与えている。

2日続けて、縁の下の力持ちとして勝利に大きく貢献したベテランは、このように今節を総括する。「負けが許されない試合を勝ち切れたのは、チーム力が上がっているからだと思います。試合ではいろいろな失敗だったり、流れが悪い時も必ずあります。それを全員で励まし、補い合うことで勝てたのは大きいです」

そして、特に初戦で際立ったオフェンスリバウンドについてこう語る。「最近、あまり試合に出られていなくて、その中でチームにとって大事なことを常に考えた結果がオフェンスリバウンドでした。打ってはいけないシュートが何回かある中で、飛び込んで取れたり、チップアウトできたのは大きかったと思います」

さらにゲームメークの部分では、逆説的ではあるが司令塔である自身のボールタッチを減らすことで、パス回しを促進させたいと考えている。「ボールが止まってしまうことを減らしたい。そこでとにかく僕がボールを持っている時間を減らし、みんながシュートを決められるようにする。最後にボールが来たら僕が攻める形で、自分以外の選手が攻めやすいように考えながらプレーしています」

新潟は前節の横浜ビー・コルセアーズ戦で、第4クォーターで19-33と失速して、80-88と痛恨の逆転負けを喫した。この試合の綿貫は大きく崩れた第4クォーターで1分20秒のプレータイムに留まっていた。しかし、昨日は第4クォーターとオーバータイムで15分のフル出場、今日は第4クォーターで7分24秒と、勝負どころでメインのポイントガードを務め勝利に導いた。

この変化には、コナー・ヘンリーヘッドコーチとの次のようなやり取りがあったと綿貫は明かす。「横浜BC戦で最後に出られなくて負けてしまった後、コーチに『自分を出せば良かった』というようなことを言ってもらえました。それもあって、この2日間は終盤に必ず出る気持ちでいました。そこで、パフォーマンスはどうであれ、勝ちに繋げられたのは良かったです」

35歳の綿貫には他の若手ガード陣にはない豊富な経験があり、その本領がこの土壇場で存分に発揮された。引き続き、B1残留へ崖っぷちの状況が続くが、新潟が考えるのは残り4試合を全勝することだけだ。そのために綿貫は「背中で見せるではないですが、行動で見せるだけです。とにかく僕はブースターさんのために残留したい。そのためにチームを良い方向に導いていきたいです」と意気込んだ。

ラスト4試合は今までよりもプレッシャーのかかる状況となってくる。だからこそ、数々の修羅場を乗り越えてきた綿貫が担う役割はより大きくなってくる。