第3戦は17得点12アシスト、オーバータイムで2本のビッグショットを決める大活躍

Wリーグプレーオフ、ENEOSサンフラワーズはファイナルでトヨタ自動車アンテロープスと対戦。2戦先勝方式の中、第1戦に敗れて崖っぷちとなるが、第2戦を勝利すると第3戦はダブルオーバータイムの末に72-64で勝利し、4年ぶりのリーグ王者となった。

王座奪還を導いた最大の功労者は、プレーオフMVPを受賞した渡嘉敷来夢であることは間違いない。だが、同時に先発ポイントガードの宮崎早織が試合を重ねるごとに本来の力を発揮したことは、逆転勝ちをもたらす大きな要因となった。

ファイナル第1戦、宮崎は渡嘉敷によるインサイドゲームに目を向け過ぎてしまい、持ち味である積極性に欠けてしまった。その結果、6アシストを記録する一方でシュートタッチも悪く、まさかの無得点に終わってしまう。そこから第2戦では8得点6アシストと持ち直すと、第3戦ではダブルオーバータイムで出場時間が44分と増大したことも影響したが17得点12アシストと大活躍だった。

試合後の会見で、渡嘉敷は「本当に長引けば長引くほどウチが有利かなと、正直思っていました。3試合目になった時点で、トヨタの選手に走り負ける訳がないと言い聞かせていました」と振り返り、ENEOSの体力、走力に絶大な自信を見せていた。

この強みを土壇場で最も発揮したのが宮崎で、オーバータイムの10分間ではともにチームトップの8得点3アシストを記録した。最初のオーバータイムでは2点を追う残り12秒に同点となるフローターを決める。さらに、ダブルオーバータイムでは3点リードの残り1分半にディフェンスリバウンドをつかむと、そのまま自らボールプッシュし一気に敵陣まで切れ込んでのレイアップによるバスケット・カウントと、要所でのビッグプレーも光る圧巻のパフォーマンスだった。

宮崎は、優勝への喜びと周囲への感謝をこのように語る。「昨年から悔しい思いをずっとしてきた中で今シーズン、結果が出て良ったと思います。不安だったものが一気に晴れて、うれしい気持ちでいっぱいです。スタートだけでなはなく、今日はベンチメンバーが本当に頑張ってくれました。ENEOSは、途中から出てくる選手たちが流れを持ってきてくれるのが1つの強みです。本当にベンチメンバーには感謝したいです」

「昨年、負けてしまった原因は私で、踏ん張れなかったことを後悔していました」

また、試合を重ねるごとに調子を上げたオフェンス面とともに、このファイナルで宮崎はディフェンス面でも大きな貢献を果たした。トヨタ自動車の中心選手である山本麻衣、川井麻衣のガード陣が、スクリーナーを使って宮崎の密着マークをはがしに来てもすぐに追いつき、激しいプレッシャーをかけ続けた。これはENEOS入団当初からの厳しいトレーニングの賜物と宮崎は言う。

「ENEOSに入って1年目から2年目にかけては、身体が弱くファイトオーバーできなくて、トム(ホーバス)さんと、(前ヘッドコーチの佐藤)清美さんに本当に怒られて毎日、泣いていました。当時、オフェンスは岡本(彩也花)さんと吉田(亜沙美)さんにやってもらっていました。こういう経験を積んできたので、意地でついていってガード陣を削っていくのが自分の仕事だと思っていました」

振り返れば昨シーズンのプレーオフ、セミファイナルでENEOSが富士通レッドウェーブに敗退した後、会見に登場した宮崎は「自分のせいで負けました」と涙を流しながら自らを責めていた。彼女が先発ポイントカードとなって今シーズンが3シーズン目だが、過去2年続けてリーグ戦で優勝できなかったことは大きな重圧となっていた。だからこそ、念願のタイトルに「優勝できて肩の荷が下りました」と明かす。

「昨年、負けてしまった原因は私だと思っています。ガードとして踏ん張れなかったことを自分の中ですごく後悔していました。今シーズンも開幕戦でトヨタ自動車、第2週で富士通に負けたりと、すごく苦しい時期が続きました。その中でもずっとお姉さんたちが声を出し続けてくれた。皇后杯で優勝できて、ここからみんなで頑張っていこうとなることで今日を迎えられました。たくさんの人に支えてもらって優勝できました」

そして、1つの大きな壁を乗り越えたことで「ここ1カ月くらい寝られていなかったので、ぐっすり寝たいなと思います」と笑顔を見せた。

今回の王座奪還は、ENEOSにとって新しい時代の始まりを告げるものだ。そして、先発ポイントガードとして3度目の正直で悲願のリーグ制覇を達成した宮崎は、新たなENEOSの舵取り役として不可欠な存在だ。