マイルズ・ターナー

「発展途上のチームでプレーするのも興味深い経験だ」

ペイサーズは35勝47敗、プレーイン・トーナメント圏外の11位でシーズンを終えた。開幕からの1カ月を10勝6敗とまずまずのスタートを切ったが、勢いは長く続かず。1月から2月にかけて2勝16敗と全く勝てない時期があり、プレーオフ戦線から大きく後退した。

あからさまなタンクをせず、常に競争力のあるチームで戦う方針を採るペイサーズには再建期がない。昨シーズン途中にトレードで獲得したタイリース・ハリバートンを中心に、中堅と若手を噛み合わせるチーム作りは進んでいるが、これで3シーズン連続でプレーオフ進出を逃している。

ライバルチームがプレーオフを始めるタイミングで、ペイサーズではシーズン最後の会見が行われた。そこで興味深い発言をしたのがマイルズ・ターナーだ。「満足はしていないけど、個人的には良いシーズンだったと思っている。まだピークではなくて、ここからがスタートだ。このチームは競争力があり、勝利に飢えている。良いコアができたと思うよ」

ターナーにはかねてから移籍の噂が絶えない。今シーズンもトレードデッドラインまでに、優勝を目指すチームへの移籍が噂された。1月末にペイサーズと2年5800万ドル(約75億円)の契約延長で合意したが、今オフも再び移籍の噂が再燃するだろう。ペイサーズは良いコアがあっても『すぐに勝てるチーム』ではない。プレーオフは逃したがタンクをしていないため、NBAドラフトの全体1位指名権を得られる確率は6.8%しかなく、チームを一気に変えるルーキーの加入も望み薄だ。

即戦力であるターナーには今夏もトレードのオファーが届くだろう。例えばルカ・ドンチッチを擁するマーベリックスは、カイリー・アービングとの契約延長に加えて、ターナー獲得で守備のテコ入れを目指すとされる。『すぐに勝てるチーム』でなければならないマブスは、1巡目指名権とローテーションプレーヤーを交換条件にターナー獲得を狙うと言われている。

ターナーはNBA7年目のシーズンを終えた27歳。契約は2025年間で延長したが、ペイサーズが力をつけるのにまだ数年を要するのであれば、両者のタイムラインは合致しない。

しかし、シーズンを終えたターナーは晴れやかな表情で「とにかく思い切り良く全力でプレーしたのが良かった」と語り、ペイサーズの環境の良さとサポートに感謝した。「組織の上層部、トレーニングスタッフや医療スタッフが手厚いサポートをしてくれた。パスファーストのポイントガードと一緒にプレーできたこと、自分の本来のポジションでプレーできたのも大きな要素だった。1年を通じて健康を維持できて、努力の成果が出るのを楽しめた。そういう意味でこの1年には満足している。もちろん、もっと上を目指すけどね」

過去2年、彼のトレードが噂は出ても成立しないのは、ケガを抱えているからでもあった。「2年前は足の指を痛めて2カ月間リハビリして、ほとんどオフがなかった。去年も足を痛めて1カ月はリハビリしていた。今回はオフをしっかり活用できる」と彼は言う。

彼はそのオフを移籍ではなく、ペイサーズでの来シーズンのために使うつもりだ。「2週間ぐらいはこの1年を振り返る。そこからは来シーズンに向けて気持ちを切り替え、ここで練習する。ここ2年のオフはリハビリばかりだったから、そう考えられるのは気分が良いよ。ピックアップゲームを楽しんで、身体強化に取り組む。リハビリのおかげで身体の細かい部分までケアするようになった。それも生かせると思う」

3年連続でプレーオフを逃すペイサーズに居続けることに不満はないのだろうか? その質問にターナーは「デビューしてすぐ何年も連続でポストシーズンに進出して、甘やかされたと思う。若手が入って来て、発展途上のチームでプレーするのも興味深い経験だ」と答える。

「若手の頃にプレーオフに行けてうれしかった。経験を積んだ今、同じように努力しているのにそこにたどり着けないのは平手打ちを食らった気分だ。好調な時期もあるけど、タイ(ハリバートン)がケガをしたり僕が何試合か欠場すると状況が一変してしまう。プレーオフまでそう遠くない位置にいるのに、3年連続で逃すのは悔しいよ。でも若手が得た経験は他に代えがたいものだ。例えばアーロン・ネスミスは僕らのために壁を突き破るような選手だ。彼にプレータイムを与えられたのは、決して悪いことじゃないよ」

ドラフトにトレードにフリーエージェント。ペイサーズのフロントはより強いチームを編成するためにオフに奔走するだろう。ターナーは「彼らはプロで、信頼に足る。ここ数年間で連れてきた選手を見ればそれは明らかだ。僕の意見が必要であれば、手助けするつもりだよ」と言う。

彼が見据える来シーズンの自分──それは他のチームではなく、ペイサーズのジャージーを着た姿だ。