シェイドン・シャープ

試合終盤の『デイム・タイム』を輝かせる意味でも、新たなスター誕生に期待

デイミアン・リラードが残り試合を欠場し、今シーズンをあきらめることになったブレイザーズ。すでに話題は来るべきNBAドラフトで誰を指名するかに移りましたが、その前にやるべきことが残っています。

それは昨年のドラフト1巡目7位で指名したシェイドン・シャープを成長させること。リラードがいなくなったことで主役の座が回って来ると、偉大なる大器はここ8試合で22.9得点、3ポイントシュート成功率43%、5.4リバウンドと素晴らしい成績を残しています。今年のルーキーで最も大きな可能性を持ちながら最も未知数な選手だった彼が、ここに来て期待を大きく上回る活躍ぶりを見せています。

育成年代であっても早い段階で注目される選手が多い中、高校時代のシャープは無名でした。それが2021年夏に開催されたナイキの17歳以下のリーグ戦で大活躍し、一気に学年トップの選手に躍り出ます。本来は今年のドラフト1位候補だったのですが、1年早いドラフトエントリーを目指して学年を変更し、ワン&ダンで選手を育てることで有名なケンタッキー大に進んだものの試合に出場することなく、そのまま昨年のドラフトにエントリーしました。

評価を急上昇させたナイキのリーグ戦以降は試合でプレーしておらず、身体能力やスキルについてはドラフトコンバインなどで確認できても、チーム戦術の中で個人能力を発揮できるのかは分からないままで、強豪チームでのプレー経験にも乏しい、あまりにも未知の存在でした。そもそもワン&ダンのルーキーのほとんどが戦術的に未熟であることが多いのに、シャープがNBAの世界で即座にフィットするのは難しいと思われました。

ブレイザーズとしてもリラードだけでなく、ジェラミー・グラントやアンフィニー・サイモンズ、ジョシュ・ハートといったタレントを揃えていただけに、あくまでも数年後の主力として考えていたはずです。

ところがシャープは不安要素だったはずの戦術理解の部分で19歳とは思えない能力を見せます。シーズン序盤からコーナーでのシューター役から見事なカットプレーを連発し、ディフェンスでも特殊なゾーンでの役割を難なくこなし、ロールプレイヤー的な立ち位置で早々にフィットしました。

ドラフト上位指名の選手は、高い身体能力を生かした『主役』としてプレーすることに慣れており、NBAに来てボールを持たなくなると何もできないことも少なくありません。ですがシャープはポジショニングやオフボールに優れているだけでなく、無駄な動きがないのが特徴で、シンプルなプレーチョイスから次のプレーへとスムーズに移行し、ギブ&ゴーやハンドオフの連続からドライブし、キックアウトしたと思ったらリターンをもらってのシュートなど、身体能力に頼らないプレーが魅力です。

リラードの欠場以降は個人技のアタックも増えています。ドライブ中でも背中に芯が通ったように上半身の姿勢が良く、ダンクやレイアップのような前に飛んでのフィニッシュ、ストップジャンプシュートやフェイダウェイのような後ろに下がってのフィニッシュ、空中でディフェンスとコンタクトしてから体勢を整えてのフィニッシュなどシュートパターンが多くて何を選択してくるか読みにくく、ベテランのような落ち着きでシュートへと繋げています。

シャープの可能性はブレイザーズにとって希望であると同時に課題でもあります。リラードは1月以降で平均35.1得点を奪っていますがチームは勝率を下げており、グラントだけでなくナシール・リトルやキャメロン・レディッシュ、マティース・サイブルなど充実したウイング陣を活用できていない課題があります。試合終盤の『デイム・タイム』があるからこそ、リラードではなくウイングを中心とした戦術を磨き上げるべきで、そのためにもシャープをスーパースターに育て上げることこそが勝利への近道なのです。