ニコラ・ヨキッチ

活動休止状態に陥っていた故郷のバスケチームを家族とともに再建

ニコラ・ヨキッチは3年連続のシーズンMVPを狙える位置に付けている。24.9得点、11.9リバウンドは昨シーズンよりやや数字を落としているものの、ポストアップから変幻自在のプレーメークは円熟味を増し、アシストは9.9へと伸びている。ナゲッツの攻めは、起点となる彼のバスケIQの高さに加えて、長らく同じメンバーでプレーすることで完璧な連携が成り立っており、チームは51勝25敗と西カンファレンス首位を快走している。

ヨキッチはNBAキャリアをナゲッツ一筋で過ごしているが、その気持ちの一部は別のクラブにある。彼が生まれ育ったセルビアのソンボルで活動するバスケのクラブチーム、『KKジョーカー』だ。

2002年に創設されたKKジョーカーの前身クラブは、地域のジュニア選手育成を軸に活動しており、ヨキッチはここでキャリアをスタートさせている。しかし、ヨキッチがベオグラードのビッグクラブでプレーするようになった後にスポンサーが撤退し、満足に活動できない状況に陥っていた。

そこにヨキッチが手を貸した。NBAプレーヤーとなり、ナゲッツで主力として活躍し始めた2017年に、彼は地元のチームへの投資を決める。ヨキッチの父が会長となり、ヨキッチの兄たちとともに育成を中心にクラブの再建を進め、ヨキッチのニックネームから『KKジョーカー』と名付けたチームを年々大きくしてきた。

ヨキッチの父、ブラニスラフ・ヨキッチは『Sportal』の取材に対し「2017年からの5年計画で、ほぼゼロからチームを作った。ユースカテゴリーから始め、今は当初の想定通りの規模になっている。ニコラのようなタレントがここから生まれればいいが、クラブとしての本当の目標は、この地域のバスケットボールの中心となることだ」と語っている。

実際、ヨキッチはバスケコートの改修やチームのインフラ整備に資金を投じることで、KKジョーカーのプレー環境を整えるだけでなく、地域貢献もしている。またオフに帰省するたびにチームを訪れ、かつての自分のようにバスケの基礎を学ぶ若い選手たちとの交流も楽しんでいる。

KKジョーカーのトップチームは現在、セルビアの2部リーグを戦っており、1部昇格を目指せる位置にいる。ヨキッチはそのすべての試合をYoutubeでチェックし、シーズンが進むにつれて応援にも熱が入っているようだ。

ヨキッチはNBAのスター選手になっても偉ぶることなく、セルビアから出てきた時の面影を残している。有名人と一緒に過ごしたり、きらびやかな場所に行くことなく、シーズン中は派手な生活をせずにバスケに集中し、シーズンが終わればすぐさま故郷に飛んで帰る。昨シーズンもMVP受賞が決まった時にはもうデンバーにおらず、ナゲッツ関係者がMVPのトロフィーを渡すためにソンボルまで行かなければならなかった。

故郷に戻って趣味である二輪馬車の競馬に興じる姿を見るのはナゲッツファンのオフの風物詩となっているが、ヨキッチのKKジョーカーへの情熱は競馬に並びつつあるようだ。今から10年後、NBAでの挑戦を終えた時には、KKジョーカーでバスケを楽しむヨキッチの姿が見られるかもしれない。