テイレン・ホートン・タッカー

「コーチはオープンマインドの持ち主で、あらゆる可能性を否定しない」

今シーズンのジャズは本当に粘り強いチームだ。昨年オフにドノバン・ミッチェルとルディ・ゴベアを放出したにもかかわらず予想外の健闘を見せ、2月のトレードデッドラインでさらにマイク・コンリー、マリーク・ビーズリー、ジャレッド・バンダービルト、ニキール・アレクサンダー・ウォーカーと主力を次々と放出しながらも34勝36敗、大混戦の西カンファレンスでいまだプレーイン・トーナメント進出を争っている。

現地3月17日にはホームで大激戦の末、東カンファレンスで上位争いを演じるセルティックスを破った。しかも、コリン・セクストンとジョーダン・クラークソンの主力2名をケガで欠きながら、である。第4クォーター終盤の猛追で一気に点差を詰め、残り35秒でテイレン・ホートン・タッカーのシュートで逆転。最後は脅威のルーキー、ウォーカー・ケスラーがグラント・ウィリアムズのシュートを叩き落して勝利をモノにした。

新たなエースとなったラウリ・マルカネンが28得点10リバウンドを記録。ケリー・オリニクとケスラーもダブル・ダブル、スタメンに抜擢されたホートン・タッカーとオチャイ・アバジも揃って2桁得点と活躍した。

この試合のカギはジャズのディフェンスとリバウンドで、ジェイレン・ブラウンに25得点、ウィリアムズに23得点を奪われたが、エースのジェイソン・テイタムを15得点に抑えたのが効いた。平均21.3本のフィールドゴールを放つテイタムが12本しか打てていないのが、ジャズのディフェンスが機能した証拠だ。

ジャズを率いるウィル・ハーディーは、この試合を前にした中4日の練習で、選手からの提案によりゾーンディフェンスを取り入れたことを明かす。「ベテランの2選手が私のところに来て、シーズン序盤にしか使わなかったゾーンにもう一度取り組みたいと言われたんだ。この数日間はゾーンディフェンスに取り組み、それがこの試合で上手くいった」

スイッチを多用する1-3-1ゾーンが、そこで用意されたディフェンスだ。セルティックスは事前に予期していなかったこのゾーンを攻略できず、ジャズは自分たちの準備がハマったことで勢いに乗った。

ベテランの2選手とは、ラウリ・マルカネンとケリー・オリニクだ。選手の間でゾーンを復活させたいという声があり、2人が代表してヘッドコーチに提言した。そのオリニクは「コーチがすごいよ」と指揮官ハーディの姿勢を褒める。

「コーチはオープンマインドの持ち主で、あらゆる可能性を否定しない。いつでも話を聞いてくれるし、真剣に検討してくれる。レストランに行くとアンケートがあるけど、あれが本当に読まれるかどうかは分からないよね。でも彼ならすべて意見をしっかり読んでくれる。その姿勢が僕らは大好きなんだ」

それは今回のベテランによるゾーンディフェンスの提案に限らない。ルーキーのケスラーやアバジが物怖じすることなく思い切ったチャレンジができているのは、ハーディの姿勢によるところが大きい。どの選手もチームのシステムに合わせてプレーを遂行しなければならないが、ハーディは若手が新しいことに挑戦するのを許可している。

そのアバジは残り1分半で3ポイントシュートを沈め、ケスラーは最後のクラッチブロックを決めた。レギュラーシーズンは大詰めを迎え、1試合1試合の重みが増す中で多くのチームや選手がプレッシャーに苦しんでいるが、ジャズは自分たちの可能性にイキイキと挑戦し続けている。