難敵の広島に快勝、桶谷ヘッドコーチ「良い流れで天皇杯決勝に入れます」
3月8日、琉球ゴールデンキングスはリーグ再開初戦で広島ドラゴンフライズに86-78で勝利した。フィリピンの至宝と呼ばれている220cmのカイ・ソット加入で高さがアップした広島に対し、強みであるゴール下でアドバンテージを取れなかったが、3ポイントシュートを32本中16本成功と高確率で沈めて難敵を撃破した。
ソットと外国籍選手2人によるビッグラインナップを試合開始から仕掛けた広島に対し、琉球も外国籍選手2人に加え207cmの渡邉飛勇、もしくは202cmのカール・タマヨを起用してサイズで対抗することもできた。しかし、ゾーンディフェンスがうまく機能したこともあり、桶谷大ヘッドコーチは「自分たちも3ビッグで対抗するより、今まで築いてきたことをやった方が今日はリズムが良いと思いました」と、渡邉とタマヨの新戦力を起用せず。これまでの積み上げてきたスタイルを貫いて勝ち切った。
また、高確率の3ポイントシュートについて指揮官は、打つまでのプロセスが良かったと評価する。「インサイドアウトができていて、相手ディフェンスがゴール下でヘルプにきたらしっかり外にさばけていました。ワイドオープンで打てていました」
この点については、9本中6本と高確率で長距離砲を沈めた岸本隆一も「シュートは良い感触で打てていました」と手応えを語る。「9本打った3ポイントシュートのほとんどがキャッチ&シュートでした。チームメートがしっかり打てる状況を作ってくれたのはチームとして理想的で、味方に感謝しています」
勝利という結果に加え、内容的にも申し分のない一戦となったことで、桶谷ヘッドコーチは次戦の天皇杯ファイナルに向け「良い流れができて決勝に入れます」と弾みがついたと締めくくる。
琉球にとってBリーグ誕生以降では初のタイトル獲得がかかるビッグマッチの相手は、Bリーグチャンピオンシップのセミファイナルで2度敗れるなど、これまで大一番で敗れてきた千葉ジェッツだ。そして決勝の舞台は、Bリーグ誕生前に琉球が所属していたbjリーグで毎年、優勝決定戦が行われていた思い入れのある有明コロシアムとなる。この様々なストーリーを岸本はこう語る。「有明はbjリーグ時代に馴染みのある場所で、琉球ゴールデンキングスにとってホームのような感覚で試合ができる場所の一つです。そして、決勝という舞台で千葉Jさんとやれるのには縁を感じます」
「自分たちが勝つことでより大きな価値を生めると思います」
千葉Jはビッグマンのギャビン・エドワーズが離脱中であるが、現在Bリーグ記録の21連勝中と勢いに乗っている。また、かつて天皇杯3連覇と一発勝負に強さを見せており、岸本は「俯瞰して自分たちのことを見ると、千葉Jさんが勝つだろうという風に大方は見られている印象を受けます」と自分たちをアンダードックと見ている。
ただ、こういった不利な下馬評を覆したのが琉球の歴史である。琉球が誕生する前、沖縄でスポーツ観戦といえばアマチュアスポーツが一般的で、お金を払って試合を見るスタイルが受け入れられるのか。沖縄のスモールマーケットのチームが大都市を拠点としたり、大企業が母体となる競合相手に資金面で渡り合っていけるかなど、いろいろと懐疑的な声もあった。そういった難題を琉球は沖縄の人々の有形無形のサポートによって解決し、文字通り地域とともに歩むことで着実に成長を続けた結果、人気と収益の両方でBリーグ随一のビッグクラブとなった。
こういった歴史を体感してきた岸本だからこそ、逆境は自分たちがさらに成長できる絶好のチャンスととらえる。「壁を乗り越えていく姿勢はキングスが育み、沖縄の人々と一緒に作り上げてきた文化です。だからこそ、自分たちが優勝するためのこの上ない状況が整ったと思います」
沖縄アリーナをホームにし、練習施設も含めリーグ随一の環境にある琉球だが、それも冷暖房設備もない公共施設で練習をするなど恵まれない環境の中でもチームに尽くし、今の土台を作ってくれた過去の所属選手、スタッフたちのおかげである。彼らが琉球に注いでくれた思いを背負ってプレーすることに矜持を持っている岸本は、さらに今回bjリーグ時代に天皇杯へ出たくても出られずに悔しい思いをしたチーム、選手のためにも戦いたいという強い気持ちを持ってコートに立つ。
そして、千葉Jへの敬意を持つ中でも「自分たちが勝つことでより大きな価値を生めると思います」と、沖縄のチームとして初の天皇杯制覇など新たな歴史を作り出すことに闘志を燃やしている。
bjリーグ時代、琉球は有明コロシアムで抜群の強さを誇りリーグトップとなる4度のチャンオンに輝いた。そして、岸本は有明で4戦全勝と相性は抜群だ。琉球が新たな歴史を作るには有明に強い岸本の活躍が欠かせない。
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