「第7戦を迎えた時、自分が信頼されていると感じることは本当に大事なんだ」
セルティックスは昨シーズン、ブラッド・スティーブンスの後任としてヘッドコーチに就いたイメイ・ユドカの下で、2010年以来となるNBAファイナル進出を果たした。ところが、さらなる躍進を目指す今シーズンのトレーニングキャンプ開始の前週に、そのユドカが『女性スタッフと不適切な関係を持っていた』として1年間の職務停止処分に。前シーズンのトップアシスタントコーチだったウィル・ハーディはジャズに引き抜かれており、その次の立場にあったジョー・マズーラを暫定ヘッドコーチに据えることになったが、チーム作りの計画は大きく狂うことになった。
トレーニングキャンプが始まった当初、見かけ上の混乱はなくてもマーカス・スマートは「やっぱり少なからず困惑している部分はある。オフの間に考えていた想定から大きく変わってしまったから」と率直な心境を語っている。
それでもセルティックスは開幕から期待に違わぬパフォーマンスを見せ、東カンファレンスの首位を守り続けている。ここまで42勝17敗という戦績は、51勝31敗だった昨シーズンを大幅に上回るもの。補強はマルコム・ブログドンにベテランのブレイク・グリフィン、トレードデッドラインにサンダーからマイク・マスカーラを加えたぐらいだが、ジェイソン・テイタムとブラウンの両エースに、大ベテランのアル・ホーフォードが中心となり、ロバート・ウィリアムズ三世やサム・ハウザーといった中堅の成長でチームが底上げされている。
マズーラはまだ34歳で、アル・ホーフォードより年下だが、明らかにマイナスからのスタートだったセルティックスを上手く軌道に乗せた。現地2月16日にセルティックスは、彼を暫定ヘッドコーチから正式なヘッドコーチに変えると発表。待遇もヘッドコーチとしての契約に切り替えられた。
マズーラはヘッドコーチへの昇格と契約更新についての話し合いがこの数日でまとまったことを明かし、「かなり劇的だよ」と笑顔を見せて、こう続けた。「でも、僕は自分が指導する選手たちと、一緒に働いてくれる人たちに感謝したい。こんな機会を得られる人は滅多にいないんだ。間違いなく、僕の夢がかなった」
今はバスケットボール部門の社長を務めるブラッド・スティーブンスは、この人事について「この調子でレギュラーシーズンを終え、ポストシーズンでも強さを発揮してもらうために、不安要素を取り除いた」と説明する。「第7戦を迎えた時、自分が信頼されていると感じることは本当に大事なんだ」
セルティックスの指揮官としてのマズーラの挑戦は、ここまで順風満帆に来ている。ただ、すべて物事が思い通りに運ぶわけではないのがこの世界だ。いずれ大きな壁に当たった時、若い彼が去年まではヘッドコーチとして大学のディビジョン2の経験しかないことが不安要素になるかもしれない。だからこそスティーブンスは「不安要素を取り除く」ための決断を下した。
スティーブンスはこう付け加えている。「このチームには可能性があり、ジョーは素晴らしい仕事をしている。彼が今だけでなく将来も、このチームを良い方向に導くことを期待している」