文=鈴木健一郎

名古屋Dへの移籍で手に入れたものは「自信」

FIBAチャレンジから先月の台湾遠征で日本代表に招集され、今回も『順当に』68名の重点強化選手に名を連ねた張本天傑。13日の練習後に話を聞くと、「今回は人数が多いし、まだ選考段階なので」と本人はまだ慎重だった。「今回は以前の経験は関係なくゼロに戻っての選考なので、初心に戻ってチャレンジャーという気持ちです」と語る。

合宿ではあっても、代表に呼ばれることは刺激になる。「普段一緒にプレーできない先輩方と一緒に練習できるので。チーム内のコンタクトとか良い経験ができます。新しいコーチがディフェンスからオフェンスまで一つひとつ細かいので、それをしっかりチームに持ち帰って、『こういうことを学びました』とみんなに伝えたいです」

これから日本代表では熾烈な生き残り競争が始まる。「代表とチームでは自分のやることが違います。代表はコーチに求められたことを一つひとつ徹底してやらないといけなくて、それが代表で生き残れる一つの技術だと思っています。言われたことを徹底してやるだけなので」

もちろん、代表のバスケットを遂行すると同時に自分の強みを出していくことも求められる。張本もそれを理解しており、自分の強みを「この身長でディフェンスの脚力があることです。ディフェンシブのアグレッシブさと外からの3ポイントシュートです」と説明する。

Bリーグ開幕を前に、張本は2014年にアーリーエントリーで入団したアルバルク東京を離れ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズに移籍した。この移籍がもたらした最大のメリットはプレータイムの増加だ。チームのファーストチョイスとしてプレーできる今は、昨シーズンは13分だったプレータイムが25分へと伸び、何より「自信がつきました」と張本は言う。

Bリーグになって注目が増した。そして代表では2019年のワールドカップ、2020年の東京オリンピックという大きな目標がある。

「4年なんて一瞬です。東京オリンピックにも出れるか分からない状況なので今からレベルアップしていかないと。自分のことだけじゃなく、学んだことを自分のチームに持ち帰って。さらには自分のチームだけじゃなくて愛知県の小学校や中学校にも広めていきたいと思います」

この日、代表合宿を視察に訪れたBリーグの大河正明チェアマンは、代表に呼ばれた選手がレベルアップして、Bリーグ全体の底上げを担ってほしいと檄を飛ばしていた。それを受けての張本の発言だが、チームに持ち帰るだけでなく、地元の小中学校まで意識していたのには驚きだ。2020年だけでなくその先のことまで、彼は見据えているのかもしれない。