堅守からのトランジションで得点を重ねると、常に先行する危なげない展開で快勝
宇都宮ブレックスはホームでファイティングイーグルス名古屋と対戦。40分間を通して持ち前の強度の高いディフェンスを続けると、オフェンス面ではベンチメンバーも効果的に加点し、常に先行する危なげない試合運びで74-59と快勝している。これで3連勝の宇都宮は今シーズンの戦績を15勝16敗し、勝率5割まであと一歩だ。
宇都宮は試合の立ち上がりから激しいプレッシャーをかけ続けてFE名古屋のドライブを抑えると、ゴール下にポシジョンを取った相手ビッグマンへのパスも簡単に通させずタフショットを打たせる。その結果、第1クォーターで相手のフィールドゴールを17本中3本成功に押さえ込み17-9と先手を取る。
第2クォーターに入っても宇都宮は堅守をキープし、攻守の素早い切り替えからのイージーシュートの機会を作り出していく。一方、FE名古屋は持ち味であるアップテンポな展開からオープンで3ポイントシュートを放つが、前半で14本中1本成功のみと当たりが来ず、宇都宮がリードを16点に広げて前半を終える。
後半に入ると、FE名古屋はボールマンへのプレッシャーを強めることで前半に機能していた宇都宮のインサイドアタックを停滞させる。そして、野﨑零也のドライブや石川海斗の3ポイントシュートなど日本人選手のアタックで10点まで差を縮める。だが、宇都宮は再び堅守からのトランジションで得点を奪って悪い流れを断ち切る。第4クォーターに入っても運動量の落ちないタフなディフェンスを継続することでFE名古屋に付け入る隙を与えず、危なげない試合運びで逃げ切った。
宇都宮の佐々宜央ヘッドコーチは守備がもたらした勝利と振り返り、中でもチームディフェンスが機能した背景としてFE名古屋の要を1対1でしっかり抑えた遠藤祐亮とジョシュ・スコットを称えた。「遠藤の(ジェレミー)ジョーンズ、ジョシュの(ジョナサン)ウィリアムズに対するディフェンスは素晴らしく、勝因になったと思います」
「今までと違う役割ですが、自分の中で楽しんでオフェンスをやっていければいい」
そして、オフェンス面で特に目立ったのは6得点3リバウンド1アシストに留まるも、力強いアタックで攻撃の起点として数字に現れないインパクトを与えた荒谷裕秀だ。白鷗大在学時は大学界屈指のスコアラーとして活躍していた荒谷は、宇都宮に加入後も非凡なシュート力を垣間見せるもオフェンスでボールに絡む機会は少なかった。しかし、今の彼はボールプッシュの役割をこなし、ハーフコートオフェンスではハンドラーを担っている。
荒谷がこの仕事を行うようになったのは、1月11日の仙台89ERS戦からでその理由として佐々ヘッドコーチはリーグ下位に沈む得点力不足の改善策になると見ている。「トランジションをもっと出さないと得点が伸びていかない。その中でヒデ(荒谷)はボールプッシュの力があります。シーズン開幕前からこの役割は意識していましたが、ケガがあったりして安定して使えない状況でした。それが7日の名古屋(ダイヤモンドドルフィンズ)戦からメンバーが揃ってローテーションがはまるようになりました。その中で全員の良さを出し、彼の良さを生かすためにはハンドラーをやった方がいいと思います」
荒谷本人は、次のように新たな役割を見ている。「シーズン前半戦、得点が伸びない理由としてシュートアテンプトが少ないところがありました。そこで、まずはアテンプトを増やすためにチーム全体でボールプッシュを課題に挙げています。速い展開のオフェンスは自分も得意で、新しい役割を少しずつこなせていると思います」
チャンピオンシップ出場へ崖っぷちとプレッシャーのかかる状況で、ボールタッチの増える責任重大な役割を担うことはプレッシャーにもなりかねないものだ。しかし、荒谷はこの挑戦にやりがいを感じている。
「ラインナップによってはポイントガードもやっていますが、初めてなので難しい部分はあります。ただ、学生時代はボールに多く触れることに慣れていたのでやりやすい面もあります。今までと違う役割ですが、自分の中で楽しんでオフェンスをやっていければいいと思います」
元々、荒谷はコンタクトに強くオフバランスになってもゴール下のシュートを決め切るなど突破力に長けており、自陣からボールプッシュを行い、スピードに乗ったドリブルを仕掛けることでこの持ち味をより発揮できる。得点力不足解消のキーマンとして、ハンドラー役の荒谷がどれだけオフェンスを牽引していけるのか注目していきたい。