鈴木貴美一

課題の得点力不足解消へ、3ポイントシュートを得意とするオルストンとミラーを獲得

これまで数々のタイトルを獲得してきた日本バスケットボール界を代表する名門のシーホース三河だが、今シーズンは現在10勝20敗と低迷している。1月18日に行われた川崎ブレイブサンダース戦も74-86で敗れ8連敗中と暗闇の中にいるが、一方で明るい話題もある。川崎戦でポイントガードのシズ・オルストンがデビューを果たし、本日もう一人の新戦力として208cmのウイングでスピードに乗ったドライブとアウトサイドシュートが持ち味のクインシー・ミラーの加入が発表された。

ここまで三河は、NBAで通算472試合の出場を誇るカイル・オクインの契約解除や故障者などで外国籍選手の編成に苦しみ、シーズンを通して安定したプレーができているのはダバンテ・ガードナーのみだった。川崎戦でも帰化選手のニック・ファジーカスに加え、マット・ジャニングやジョーダン・ヒースに要所で得点を決められてしまい、「川崎さんは外国籍選手が非常に良い形で得点を取っていたのに対して、うちはダバンテのみでした。西田(優大)選手は良かったですけど、外国籍選手はちょっと厳しいところでした」と鈴木貴美一ヘッドコーチが振り返る差があった。

この外国籍選手のテコ入れを行った背景として鈴木ヘッドコーチはまず、オルストンについて、「ポイントガードの部分で結構やられているケースがこれまで多かったです」と語る。そして28-17とビッグクォーターを作った第3クォーターにキレ味鋭いアタックで守備を収縮させ、チャンスメーカーになっていたプレーを期待していると続ける。「今日、初めての試合で最初はロッカールームでも緊張していましたが、第3クォーターから開き直って自分らしさを出してもらいました。あのようにやっていてもらいたいのが、ポイントガードとして彼を取った理由です」

そしてミラーの獲得には、前日にインジュアリーリストしたアンソニー・ローレンス2世のコンディションも影響している。「アンプ(ローレンス2世)は足の甲を天皇杯の予選ラウンドの前から痛めていて本人は大丈夫と言っていましたが、昨シーズンのようなパフォーマンスができずにいました」と指揮官は明かすと、ミラーについては「ダバンテより背が高くて3ポイントシュートの入る選手」と評していた。

オルストン「速いペースでプレーし、3ポイントシュートに期待してもらいたい」

オルストンとミラーの加入で最も期待されるのは「ディフェンスは頑張っていますが、得点が取れない」と、ヘッドコーチも語る得点力不足の解消だ。実際、ここまでの三河はリーグワースト5位の平均74.4得点に留まり、3ポイントシュート成功率はワースト4位の31.8%に終わっている。

オルストンは自身の持ち味を「3ポイントシュートでスペースを広げ、トランジションで走ることができるのが特徴です。ファンの皆さんには速いペースでプレーし、3ポイントシュートを決めることに期待してもらいたいです」と語り、長距離砲にも自信を見せる。そして、ミラーも外から打てるビッグマンのため、「ダバンテがダブルチームで相手をひきつけてくれるので、僕たちはオープンシュートを打つことができます。そこでどれだけ決めることができるかが大事です」とオルストンが強調するように、どれだけ効果的に外から射抜くことができるのかは三河の巻き返しの大きな鍵となる。

オルストンを機能させるために必要となってくるのは、彼のサイズ不足を補うための日本人ビッグマンの存在である。三河には206cmのシェーファー・アヴィ幸樹がいるが、彼に加えて昨シーズンは故障でわずか2試合の出場に終わった203cmの橋本晃佑が11月中旬から復帰し、調子を上げている部分も大きい。

鈴木ヘッドコーチは、次のように橋本を西田とともにシーズン前半戦で目立った存在として挙げている。「オン・ザ・コート1で20分戦う試合をずっとしなければいけない中で、西田選手のように動きが分かって成長している選手がいます。橋本選手もケガから復帰して、人の話をよく聞きながらすごく良い動きをしています」

そして、ここにきて百戦錬磨のベテランで、抜群のゲームコントロールを誇る柏木真介のコンディションが上がっていることも大きい。年齢的にもフル稼働は難しいが、試合の要所で彼がコートに立てることの大きさを指揮官はこう語る。「柏木選手はずっと故障でプレータイムが少なかったですが、1週間前からしっかりと練習をできるようになっています。彼には経験があり、僕が何をやりたいか全部分かっていて選手目線で伝えてくれるので信用しています。ただ、ずっと彼に頼って残りの試合をやる訳にはいかないので、若い選手が良いところを盗んでほしいと思います」

現時点で三河は中地区2位の横浜ビー・コルセアーズとは8ゲーム差となっており、残り30試合で逆転するのが困難であることは間違いない。ただ、横浜BCとの直接対決は3試合残っており「(オルストン、ミラーの)合流は遅れたのでリスキーですが、なんとかまだぎりぎり間に合うので頑張りたいと思います」と指揮官が語るように可能性は残っている。新戦力を起爆剤に三河の逆襲がスタートする今週末の戦いに注目だ。