コースト・トゥ・コーストの失敗に「みんなにイジられたよ(笑)」
ルディ・ゴベアは疑いの目を向けられている。ティンバーウルブズは昨シーズンに46勝36敗、プレーイン・トーナメントでクリッパーズを破るもプレーオフではファーストラウンドでグリズリーズに敗れた。カール・アンソニー・タウンズやアンソニー・エドワーズといったリーグ屈指の若手有望株を擁するチームをもう一段階上へと引き上げるための補強がゴベアだ。
大量の指名権、つまりはチームの将来を引き替えにして『今、勝てるチーム』を作るはずの補強だが、ウルブズはここまで19勝21敗と負け越し、今はプレーイン・トーナメント圏外の西カンファレンス10位と昨シーズンより成績を落としている。
ゴベア自身のスタッツは得点が15.6から13.9に、リバウンドが14.7から11.9へと落ちている。ただ、問題はスタッツではなくチームが勝てていないことであり、勝利に直結するようなインパクトを彼が残せていないところにある。
現地1月6日、ポール・ジョージもカワイ・レナードも欠場したクリッパーズを撃破して、ウルブズは今年に入って3連勝を記録。シーズンハイの25得点と21リバウンドを記録したゴベアは勝利を喜ぶとともに、「まだ最高のルディは見せられていない」と語る。「これまでたくさん努力してきて、チームメートもコーチもそれに合わせてくれた。それが報われるのはこれからだ」
NBAでの9シーズンすべてをジャズで過ごしてきた彼にとって、新しいチーム、新しいバスケへの順応は簡単ではない。ユーロバスケットに出場したことでウルブズへの合流が遅れたのもその一因だ。「でも、僕は他の何かのせいにするのが好きじゃない。ここまで調子良くやってこれたわけじゃないけど、疲れがあっても結果が出なくても、毎試合そんな気持ちで挑みたいんだ。僕は自分自身をコントロールし、最高のルディとしてコートに立ちたい。最高のディフェンシブプレーヤーになりたいし、優勝したいんだ」
ゴベアはいつでもゴベアだ。常に激しく戦い、リバウンドに絡み、相手との駆け引きの中で狡猾に振る舞い先手を取るリーグ屈指のリムプロテクターだ。そしてハンドリングは苦手で、ボールをポロポロとこぼす。ディアンジェロ・ラッセルの予測不可能なパスは、ゴベアにこそ予測不可能なもので、ディアンジェロのタイミングで出されてもキャッチできないことが多かった。だが、試合をこなす中でディアンジェロとゴベアはお互いのスタイルを理解し、プレーを調整してパスが合うようになっている。良い部分は残しつつ、悪い部分を修正していくことで、連携は出来上がっていく。
もっともゴベアの不器用さは、それはそれで変わらない。クリッパーズ戦で、ゴベアがリバウンドからボールプッシュし、コースト・トゥ・コーストでフィニッシュに持ち込む場面があった。完璧なプレーに見えたが、ディフェンスをポンプフェイクで跳ばした後のイージーなレイアップをゴベアは落としてしまう。
この『珍プレー』をゴベアは「みんなにイジられたよ、ダンクしろってね。本当にそうだよ、なぜダンクに行かなかったか、今夜は一晩中考えることになりそうだ」と笑顔とともに振り返る。
少し前の会見では、自分への批判について「僕の調子が良かろうが悪かろうが、粗探しして批判したがる人はいるものだ。そんな意見に左右されず、僕は自分のプレーに集中する」とコメントしていた。その時の憮然とした顔と、珍プレーを振り返る苦笑いは、同じ選手の表情とは思えない。勝敗にかかわらずゴベアは自分とチームの向上に集中するのだろうが、今年に入って勝てていることで、彼と周囲の雰囲気は大きく変わりつつある。
『最高のルディ』までの道のりはまだ遠いのかもしれないが、少しずつでも着実に近付いている。