ドノバン・ミッチェル

延長を制したキャバリアーズ、最高の形で2023年初戦を飾る

キャバリアーズにとっては最高の年明けとなった。ロケット・モーゲージ・フィールドハウスにブルズを迎えた2023年初戦、ドノバン・ミッチェルが驚異の71得点を記録し、オーバータイムにもつれる激闘を制した。

ダリアス・ガーランドとエバン・モーブリーと主力2人をケガで欠き、試合序盤からビハインドを背負う展開に。ミッチェルは司令塔のガーランド不在をカバーするためにゲームメークに重心を置き、第1クォーターは5得点と自分から攻める機会が少なかった。大晦日の試合もガーランド不在でミッチェルは15得点しか取っていない。それでも第2クォーターには自分で攻める機会を増やして11得点を挙げる。

ブルズもこれを警戒し、後半から彼へのプレッシャーを強めたのだが、結果的にはこれが失敗だった。ミッチェルは巧みにファウルを引き出し、第3クォーターだけでフリースロー12本を獲得してすべてを決め、24得点を奪う。最大21点あった点差が第3クォーター終了時点では5点に縮まり、そしてミッチェルは完全にリズムに乗っていた。

それでもブルズはエースのデローザンが第4クォーターに11得点と勝負強さを発揮してリードを守り続ける。残り1分半で追い付かれるも、その直後に見事なボールムーブからニコラ・ブーチェビッチが3ポイントシュートを決めて突き放した。

しかしキャブズはあきらめず、残り4.1秒にブルズ3点リードでミッチェルがフリースロー2本を得る。ミッチェルが1本目を決めた後、2本目をわざと外してオフェンスリバウンドを取るべくキャブズはロビン・ロペスを入れ、ブルズはこれを阻もうとパトリック・ウィリアムズとアンドレ・ドラモンドを送り出す。

ただ、どのビッグマンよりも早くリバウンドに飛び付いたのはミッチェルだった。そのままゴール下のシュートをねじ込み、土壇場でキャブズが追い付く。こうして迎えたオーバータイム、勢いは完全にキャブズのものだった。延長の5分間でミッチェルは徹底的に警戒されている中で3ポイントシュート3本を含む13得点を挙げ、キャブズが15-4と圧倒。145-134で勝ちきった。

ミッチェルはフィールドゴール34本中22本成功の71得点、8リバウンド11アシストを記録。試合が終わった直後のコートインタビューでインタビュアーに「球団新記録の71得点です」と紹介され、まずは観客席からの歓声をうれしそうに聴いていた。話し始めるところにチームメートのジェディ・オスマンが割って入り、ファンにMVPコールを要求する。アリーナに響き渡る「MVP!」の声をひとしきり楽しんでから、ミッチェルは「僕らは最高のチームなんだ。良いプレーをする仲間がいなければ、こうはならなかった」と語り始めた。

「本当にそうなんだ。前半の出来はあまり良くなくて、JB(ヘッドコーチのJ.B.ビッカースタッフ)には集中しろと怒られたよ。そして、みんなで力を合わせた。みんなが良いポジションを取ってくれて、僕はただプレーするだけで良かった」

そのビッカースタッフはハーフタイムこそ怒ったかもしれないが、ミッチェルへの信頼は厚い。第3クォーターに彼がリズムに乗った判断すると、通常は第4クォーターの最初はベンチで休ませるのだが、この試合ではずっとプレーを続けさせた。後半の24分間と延長の5分間、ミッチェルは一度もベンチに下がっていない。

ミッチェルは言う。「この数試合は自分の力を発揮できなかった。攻めでも守りでも自分のベストを出せず、それで何試合かを落としたことが心に残っていたんだ。だから雰囲気を変えたかった。今日も最初はシュートが決まらなかったけど、とにかく攻め続けて道を切り開こうと思った」

オーバータイムには疲労困憊の表情を見せ、それでも攻め続けていたミッチェルは「足がつっていたけどシュートを打っていた。最後は腕が途中までしか上がらなかったよ」と笑う。レブロン・ジェームズが持っていた球団記録と、自分自身の記録を上回るキャリアハイの71得点を挙げたミッチェルは、MVPコールの中を満足そうな顔で引き上げていった。