仲間の自己犠牲の上に成り立つワンマンプレー
1勝1敗で終わったアルバルク東京と京都ハンナリーズの連戦は、2試合を通して『マブンガの試合』だったと言っても過言ではない。日本で4年目、京都で2年目を迎えるジュリアン・マブンガは、もともとBリーグ屈指のオールラウンダーだが、綿貫瞬がケガ離脱中、伊藤達哉もコンディションに不安を抱えるチーム事情にあってボールハンドラーの役割を担い、その能力を如何なく発揮した。ゲーム1は27得点14アシスト、ゲーム2は41得点8アシストの活躍。だがゲームを支配したインパクトはそれ以上のものがあった。
ゲーム2は接戦の末に敗れたが、「後半に盛り返して追い付く展開に持ち込めたチームを誇りに思う。A東京のように日本人ビッグマンがおらず、自分と(デイヴィッド)サイモンの代わりがいない中、後半はチームでよく戦えた」と、マブンガは敗れてなお胸を張った。
この連戦では、日本でのキャリアハイとなった41得点を挙げたゲーム2よりも、チームが勝ったゲーム1のほうが満足度は高かったそうで、「自分の感覚としては昨日のほうが断然良かった。今日はオフェンシブになりすぎて、自分だけが行ってしまったタイミングもあった」と振り返る。
ゲーム2のマブンガは少なからず気合いが空回りした部分があった。ほぼすべてのボールを自分で運び、自分の判断でオフェンスを進めていく。試合の立ち上がりはサイモンと2人だけで、第2クォーター以降はマブンガだけですべてをこなしているように見えた。
ただし、これもマブンガからすればチームの勝利のため。その時点で勝利に最も近い選択肢が、ほとんどの場合で「自らアタックする」だっただけのことだ。「ヘッドコーチはいつも責任感を持ってプレーするよう僕たちに求めている。その通りにやったつもり」との言葉通り、やるべきことをやり通した。
マブンガのアタックが、京都の勝利への道となる
マブンガは「ポイントガードでもセンターでも、どの位置にいても自分の仕事はプレーメークだ」と自身のプレースタイルを語る。「ポストアップしていても必ず周りを生かそうと思ってパスを意識している。常にそうやってプレーしている結果が今のアシスト数なんだ。自分が相手を引き付けることで、オープンショットを作ることができるならパスを出す。自分が攻めることができるなら自分で行く。今日はアタック、アタックという気持ちで行った。いくらディフェンスが良くても毎回止められるものではないのでアグレッシブな姿勢を失わずに攻め、ディフェンスが寄ってスペースがなくなったらパスアウトすることを心掛けた」
ゲーム1は40分フル出場、ゲーム2では1分間だけベンチに下がったが、これは休むためというよりはジャッジに意識が行った頭を冷やすためのもの。京都はマブンガ抜きには成り立たないチームとなっていた。サイモンがゴール下に構え、3人のシューターが外でパスを待ち、あとはマブンガに託す。少々極端な表現だが、これが今節の京都のバスケットだった。
もちろん、日本人選手もボールに関与することは少なくてもディフェンス全般で、またオフェンスではスペーシングと3ポイントシュートで貢献しているが、チームとしてはマブンガを強調しすぎている感も強い。しかし、それが勝利への最短ルートであれば選択としては間違いではない。
「ベストプレーヤーを打ち倒してチームを勝たせたい」
まるで昨シーズンのキャバリアーズだ、と思う。となると、マブンガはレブロン・ジェームズということになるが、「僕はレブロン・ジェームズじゃないけどね」とマブンガは大笑い。それでも「協調性よりも、チームが勝つためのプレーをするのが僕の信条だ」と、舞台は違えど同じ志向であることは否定しない。
その姿勢はあくまで強気で、「個人的には、自分がリーグのベストプレーヤーを打ち倒してチームを勝たせたいと考えている」と話す。
マブンガはA東京との連戦の前に6試合を欠場していた。手首を伸ばした際に痛みがあったが、今はほぼ100%のプレーができるとのこと。ほぼフル出場という状況は今後も続くだろうが、「正直に言えば疲れはあるけど、トレーナーが一生懸命ケアしてくれるから大丈夫」と、コート外でもチームに支えられて自分のパフォーマンスがあることは理解している。
復帰早々、堅守自慢のA東京を相手に鬼神のごとき働きを見せたマブンガ。これからコンディションが上げれば、毎試合30得点、もしくは毎試合トリプル・ダブルも期待できるのではないだろうか。日本的な「和を重んじる」視点からすれば、マブンガの個人が先行するプレースタイルは合わないかもしれない。だが彼は、あくまで京都に勝利をもたらすために、仲間の自己犠牲を理解した上で、チームコンセプトの『ダシツクセ』を体現するつもりだ。
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