パスカル・シアカム

チームメートから水で祝福され「今もまだ寒いんだ」

ニックスは破竹の8連勝中で、ラプターズは泥沼の6連敗中。ラプターズが勝率5割前後から一気に陥落したのとは対照的に、ニックスは急浮上した。勢いの差は明らかで、マディソン・スクエア・ガーデンは地元のニックスの勝利を期待するファンで埋まっていた。

その予定調和を許さなかったのは、パスカル・シアカムだ。フィールドゴール25本中17本成功、キャリアハイの52得点を叩き出す活躍でニックスをねじ伏せた。

「楽しかった。大事な試合だと分かっていた上で、その雰囲気を楽しむことができた。もうずいぶん長く、この感覚からは遠ざかっていた。気分良くプレーして勝つ、それを取り戻したかったんだ」とシアカムは言う。

攻守ともに機能せず、エネルギー不足に陥っていたチームに喝を入れるべく、シアカムは試合序盤からエンジン全開。彼のアイソレーションの多用は、ラプターズらしいチームバスケットが機能していないことを意味するために、あまり良いことではないのだが、シアカムは良い形でボールをもらったわけではなくても得点を取ることに強い執着を見せ、アタックを続けた。彼の持ち味であるゴール下での多彩なフィニッシュはもちろん、ミドルジャンパーに3ポイントシュートと、タフショット気味なシチュエーションでも積極的に打ち、決めれば決めるほどに調子を上げていった。

ニックスもジュリアス・ランドルとRJ・バレットがそれぞれ30得点を挙げて勝利への執念を見せたが、シアカムが4点リードの残り16秒でコートを縦断してフィニッシュを決めるバスケット・カウントで勝負を決めた。

試合後のコート上でのインタビューでも、ロッカールームに戻ってからも、シアカムはチームメートから水を浴びせられる手荒い祝福を受けた。だが、これこそシアカムが求めていたものだ。

「流れを変えたかったんだ」とシアカムは言う。「大変な状況ではあったけど、みんながお互いに励まし合い、試合に対する喜びや幸せを感じられる状況を作りたかった。みんな特別な存在だと認識し、お互いの成功を喜ぶ。そういう機会がしばらくなかった。僕が良いプレーをして、それに対してチームメートが大喜びしてくれる。そういったゲームの喜びはすごく大事なものだ」

会見に応じたシアカムは「シャワーを浴びたけど今もまだ寒いんだ。冷たい水をずいぶん浴びたからね。コート上でのインタビューも滅茶苦茶になってしまったし。OG(アヌノビー)なんかペットボトルを投げてきて危ないんだけど、チームにとって素晴らしい瞬間だから良かったよ」とうれしそうに話す。

「このチームには才能ある選手がたくさんいて、良いバスケをしたいという気持ちがある。成績がどうであれ、日々の努力を続けていれば、いずれ何らかの形になると信じているんだ。良いことも悪いこともあるけど、今日みたいな日は気持ちも上がるし、次に向けてまた頑張ろうと思える。チームを正しい道に戻したと言えるんじゃないかな」

これで14勝18敗。現状はプレーイン・トーナメントに辛うじて進める10位で、勝率5割はいまだ遠いが、シーズンはまだ折り返し地点の前だ。シアカムは言う。「もちろん、大事なのはこれからで、今日の出来事を次にどうやって繋げていくのか。僕らは積み重ねなければいけないし、そうなることを願っている」