「試合を重ねるごとに良くなっている」
ワールドカップアジア予選のWindow5におけるバスケットボール男子日本代表にとって最大の懸念は八村塁の欠場であり、渡邊雄太も予備登録メンバーには入っているものの、出場はほぼ無理という状況にあることだ。Window4で敵地でのカザフスタン戦、ホームでのイラン戦に連勝できたのは、八村、渡邊のドライブが攻撃の起点として機能していたことが何よりも大きかった。
この強力な武器を欠くことで、より存在感が高まるのがBリーグ最強ビッグマンのニック・ファジーカスだ。Window4の2試合は今夏に行なった左足手術の回復が間に合わず欠場したものの、代表デビューとなったオーストラリア戦で25得点12リバウンドを記録し、世界の強豪を撃破する世紀の番狂わせの立役者になったのは記憶に新しい。
Bリーグでも開幕2試合を欠場し、しばらくは控えスタートで出場時間が制限されるなど、本来のコンディションとは程遠いことで精彩を欠いていたが、ケガが回復し練習をしっかり積めるようになったことで本来のプレーを取り戻しつつある
Bリーグ開幕から初の先発出場となった10月27日の琉球ゴールデンキングス戦で28得点を挙げるなど、先発復帰後の8試合では平均プレータイムが30分を超え、平均得点で約25得点といつもと変わらぬ姿を披露。「今のコンディションは100%に近い。毎週、試合を重ねるごとに良くなっており、試合当日には100%になっていると思う」とファジーカスは自身の復調に自信を持つ。
「少ない練習期間で最大限の成果を出さないといけない」
他の常連組とは違い、代表デビューがオフシーズンだったファジーカスにとっては、週末にリーグ戦を行い平日は代表合宿という掛け持ちは今回が初めての経験となる。
「平日は代表に集中して、週末はリーグの試合がある。難しいというか、いつもと違う感覚」と当初は慣れない面もあったようだが、今は「代表は少ない練習期間で最大限の成果を出さないといけない。この2週間は良い形で過ごせた」と過密スケジュールにも適応できている様子だ。
また、Window4で一緒にプレーした八村の不在には、「もちろん塁は特別な存在だ」と認めるが、それでも「彼の穴を埋めるために、みんなでステップアップしなければいけないけど、僕のプレースタイルが何か変わることはない」と自分の持ち味を出すことを第一に考えている。
Windows5で日本代表は、八村と渡邊が攻守の素早い切り替えから、積極的にゴール下へと切れ込むことで試合の主導権を握っていた。この2人の不在でドライブの破壊力が落ちることは否めない。また、2人にかわるファジーカスの持ち味は彼らのような機動力ではなく、ハーフコートオフェンスでの多彩なシュートである。本人も「自分はセットプレーでこそ効果的なプレーができる選手だ」と言うが、だからといって早いペースに対応できないわけではないと強調する。
「彼らがいなくともアップテンポな戦いはできるし、ハーフコートとの良いバランスを見つけられると思っている。それにリバウンドをしっかり取れれば、トランジションに移ることができる。自分もしっかり走っていくので、そこから得点することはできる」
そして振り返ればオーストラリア戦の前、ファジーカスは「僕を信じてほしい。オーストラリアは僕のいる日本代表に勝ったことはない」と語り、見事な結果を残した。有言実行のファジーカスが「100%」と宣言するからには、再びチームに大きな勝利をもたらすと期待したい。