文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

リオでは刺激を受けることがたくさんありました

Wリーグ開幕から2カ月、JX-ENEOSサンフラワーズはここまで18戦全勝と、期待を裏切らぬ強さを見せている。先週末はリオ五輪メンバーの本川紗奈生、三好南穂を擁するシャンソンVマジックと対戦したが、84-53、84-50と2戦とも圧勝した。

初戦の試合後、間宮佑圭に話を聞いた。「今年は特に外と中のバランスが取れてきました。それが強さの秘訣というか、今年のJXは一味違うぞ、というところだと思います」。リーグ8連覇中のJX-ENEOSが「一味違う」となれば、他のチームが手も足も出ないのも無理はない。

今夏、間宮はJX-ENEOSのチームメートである吉田亜沙美や渡嘉敷来夢とともにリオ五輪を経験した。リオでの女子日本代表はまさに『完全燃焼』の戦いを見せた。世界王者のアメリカを相手に力を出し尽くした後、9回目のリーグ優勝という目標に向けて『燃える』ことができるかと問われれば、きっと簡単ではないはずだ。

間宮は今、モチベーションをどう保っているのだろうか。「実際に自分にも不安はあったし、トム(ホーバス/ヘッドコーチ)もオリンピックが始まる前からそれが心配だと言っていました。でも今回はすんなりリーグに入れたと思います」

「優勝を続けていて、優勝しても『うれしい』より『ホッとする』毎年ですが、今は10連覇を目標にしています。特に今年はヘッドコーチも代わってチームの雰囲気が違うので、うまくリセットしてリーグに臨めました。気持ちとプレーがうまくマッチしていると思います」

いわゆる『燃え尽き症候群』の不安がなかったわけではないと間宮は言う。「ロンドン五輪を逃したOQT(世界最終予選)の後はそれが相当すごくて、その経験があったので心配でしたが、リオで刺激を受けることがたくさんあって。一番心配してましたが、今年はすんなり入れました」

今は安定じゃなく、積極的な、アクティブなプレーを

今シーズン、そして来シーズンまで勝ち続けてようやく10連覇。その先の2020年は間宮の視野に入っているのだろうか。「4年後のことを今、『はい、頑張ります』って言うのも逆に無責任なのかなって思ってます」と間宮は言う。「私は遠くに目標を置くタイプでもないので、1年1年を積み重ねていって、見えたところで標準を合わせていこうと思います。もちろん、何も準備できていないというのは怖いので、トムとも話しています」

しかし、Wリーグには外国籍選手がいない。特にインサイドの選手にとって、自分より高く強い選手と当然のようにマッチアップしなければならない国際試合との差は大きい。「海外から日本に帰って来た時に、その感覚を忘れないようにしないといけない」と間宮は言う。

もっとも、それは海外の大型選手とのマッチアップに限った話ではない。「バスケットって相手のペースに合わせてしまう部分があります。走るのが遅い相手であれば、こっちもこのぐらいでいいや、って。そうして人に合わせると自分のペースが崩れるので、常に海外の選手を意識するのは大変ですが、相手ではなくて自分がいかに足を動かせるか、飛べるかというのを意識しています」

26歳の間宮は、アスリートとして最も充実した時期をこれから迎えようとしている。さらなる成長に向けて、こんな目標を語ってくれた。「特にオリンピック前は、チームから求められる安定感が頭にあったんですが、今は『安定なんて言ってられない』と思っています」

「安定したプレーじゃなく、自分からもっとガンガンやる、グイグイ引っ張るようなプレー。ある意味、わがままなぐらいでもいいのかなと。それぐらいのプレーを私はしなきゃいけないんだと、それをオリンピックで感じました。今は安定じゃなく、積極的な、アクティブなプレーをイメージしています」

リオ五輪と同様に渡嘉敷とインサイドで組む間宮のプレーには、以前と変わらぬ安定感があったと同時に、積極性もしっかりと見て取れた。Wリーグを戦いながらも、リオで戦ったトルコの、オーストラリアの、そして世界王者アメリカのライバルたちのイメージがあったのかもしれない。

いずれにしても、間宮を筆頭にJX-ENEOSの選手たちに、相手に胸を貸すような受け身の姿勢は全く見られなかった。どこまでも挑戦者の気持ちで。やはり今年のチームは「一味違う」ようだ。