文=古後登志夫 写真=松原真

桜花学園は良い選手を集めてからの指導が細かい

──ご自身の代から続く桜花学園の伝統というか、これだけ勝ち続けるだけの『秘訣』のようなものがあると思います。そのへんはいかがでしょうか。

これだけの成績を収めている先生がいて、メンバーも全国各地から集まっているから、『勝つのが当たり前』と思われているかもしれません。でも、私が選手だった経験から言っても、良い選手がどれだけいても、チームとして勝つのは本当に難しいものです。桜花学園は良い選手を集めていますが、そこからの指導が細かいんです。基本を徹底します。

先生も昔からずっと指導をされていて、新しいバスケットのスタイルに触れる機会はあまりないはずなんですけど、いろんな人と接する中で新しいものを吸収しています。例えば今のNBAでこういうプレーがある、というのも先生は知っています。私たちの代のもっと前からだと思いますが、基本を徹底しながらも、新しいこともどんどん吸収しているんです。勝ち続ける秘訣があるとしたら、それだと思います。

──「女子バスケと言えば桜花」みたいなイメージがありますが、プレッシャーに打ち勝つ秘訣はありますか?

去年、桜花学園に帰って来て最初に思ったのは、「勝つことへの気持ちが本当に強い」ということでした。それは先生の指導によるものだと思いますが、こっちがそれを言う必要はありませんでした。逆に私が言うのは、「勝たなきゃいけない」って気持ちを持ちすぎないでほしい、ということ。インターハイに勝ったって、次はまた挑戦者なんです。自分たちの今の力を発揮する、そういう気持ちでやってほしいと思っています。

もちろん、プレッシャーを感じている子もいるし、緊張する子もいます。ただ私が言いたいのは、いろんなものを背負ってても緊張していても、結局コートで自分のプレーができなかったら何の意味もないということ。それで後悔するよりは、思い切りぶつかっていったほうがいい。緊張するのは当たり前だから仕方ないけど、気負う必要はないよ、といつも言っています。

──選手たちは思春期の高校生なわけで、アシスタントコーチという立場でいろんな悩みを聞いたり、アドバイスすることも多いですか?

気付いたらなるべく声をかけるようにはしています。高校生なので浮き沈みはすごくあります。例えば先生がある生徒を叱ったとしたら、その選手の様子は見ています。先生が何を教えたかったのか、分かっていなければ伝えたいのですが、何でもかんでもフォローすればいいわけではないので。先生が叱って私が優しくフォローして、そこが逃げ道になるのも違いますよね。ヘコむことも必要だし、立ち直るきっかけを自分で見つけられそうならわざと声をかけなかったり。

選手には思い切りプレーしてほしい、自分はその後押しをする

──『桜花学園のバスケット』というものは、どんなスタイルなのでしょうか。

先生は毎年そのチームカラーによって変えるので、「これ」というものはありません。今年で言えばディフェンスからのブレイク、アーリーオフェンスで攻めるバスケットです。去年から取り入れていたので、大きく変わるわけではありません。

──桜花学園のことをあまり知らないバスケットボールファンに向けて、注目選手を何人か挙げるとしたら誰でしょう。

去年からのスタートが馬瓜ステファニーと粟津雪乃、山本麻衣です。馬瓜はキャプテンで、オフェンスもディフェンスも必ず要になる選手。1対1が独特のリズムで、個人でも合わせでも得点できます。チームのムードメーカーでもあります。

粟地は180cmちょっとで線が細いのですが、とにかく走る。ガードよりも走ります。1対1のような派手さはないですが、チームが苦しい時に走る、オフェンスリバウンドを取るプレーに注目してもらいたいです。

山本は2年生ですが、下級生のメンタルではありません。去年は1年だったという部分がありましたが、今年は経験を積んでさらに成長して、自信を持ってプレーしている感じがすごく見えます。ディフェンスでも相手のすきなことをやらせないし、度胸もあってルーズボールにも必要とあればダイブで行きます。本当にハートのある選手です。

──間もなくウインターカップですが、昨年は決勝で岐阜女子に敗れました。

思い出したくないけど、忘れないです。忘れる日は来ないと思います。リベンジの気持ち、チャレンジャーの気持ちで臨みます。

──それでは、大会に向けての意気込みを聞かせてください。

チームとしては去年負けているので、一戦一戦をチャレンジャーとしてやっていきたいです。先ほども言ったように、それぞれの選手が思い切りプレーしてほしいので、私個人としてはその後押しをしっかりやりたいですね。