西村渉&辻永遠

洛南は今年でウインターカップ出場45回目、4回の優勝経験を誇る名門だが、2008年大会を最後に優勝からは遠ざかっている。留学生プレーヤーのいるチームが当たり前になった今、日本人選手だけのチームで勝つことはどんどん難しくなっているが、それに挑むのが洛南だ。センターの西村渉とポイントガードの辻永遠は、3年間積み上げた自分たちのバスケに「本気で日本一を狙える」との自信を持ち、高校最後の大会に臨む。

「美しさと泥臭さ、1チームで両方が見れるのが洛南の持ち味」

──まずは西村キャプテンから、自己紹介をお願いします。

西村 洛南高校、キャプテンの西村渉です。三重県出身で、東海大会は勝ったのですが全国大会では予選リーグ敗退でした。最後は勝って引退したいという思いだったのですが、京都精華中学で全国優勝して勝って終わったのが隣にいる辻なんです(笑)。僕は中学の時からフィジカルを生かしたリング下のプレーが得意で、高校になってから外からのドライブ、3ポイントシュートだったりパスだったり、多彩なプレーができるようフォーカスして練習しています。

──では辻選手から、西村キャプテンがどんな人か教えてください。

辻 めちゃめちゃ声がデカい! だからキャプテンに向いてるんですけど、教室でも盛り上がると一人で訳の分からない声を出して迷惑な時もあります。プレーの面では頼りになって、日本人だけの洛南のセンターとして留学生とマッチアップして戦ってくれます。ドライブで中に切れ込んでヘルプを寄せてパスでチャンスを作るプレーなんかは、予選の決勝でも輝いていました。

西村 プレーの面で普段褒めてもらうことがないのでうれしいんですけど、声が大きい以外にも僕はもうちょっと良いところがあるんじゃないかと思います。3年間一緒にやってきて、声がデカいだけ……(笑)。

──仲が良いということで(笑)。では今度は辻選手の自己紹介をお願いします。

辻 辻永遠です。奈良県出身で、京都精華学園で全中で優勝して、ジュニアオールスターでも優勝という、なかなか輝いた形で洛南に入りました。今年から試合に出ることも増えて、試合経験が豊富な星川(開聖)、三浦(健一)、西村の3人に自分が加わった時に、ポイントガードとしてどういったプレーをすべきかを考えながらやっています。

──西村選手、辻選手はどんな人となりですか?

西村 経歴としては僕よりはるかに上で、素晴らしい選手と一緒にやれると楽しみに入学しました。経歴があるとプライドが高いかなと思ったんですけど、物腰が柔らかくて落ち着いていて、プレーでも自分の考えやどう動くべきかを責任感を持って言ってくれるのがすごく良いです。学校生活ではものすごく静かです。クラスの席が僕の前なんですけど、いるのかいないのか分からないぐらい。寝てるの?(笑)

辻 僕らはスポーツクラスで、バスケだけじゃなくバレーや陸上のスーパースターがいて、どうしても『俺が、俺が』ってタイプが多いので、他のクラスから「うるさいぞ」って言われるぐらいなんです。だから僕は静かにしています。バレー部は4年前に全国優勝していて、練習中の声出しも素晴らしいです。陸上では高校記録を塗り替えて4×100mリレーで銀メダルを取った桐生祥秀さんがOBだし、そういう人たちが結果を出しているので、自分たちも頑張らないとと励みになります。

西村渉

「小さいながらも頭を使ってバスケをする姿に感銘を受けた」

──洛南でバスケをやってきてこれまで一番良かったこと、一番印象深い出来事を教えてください。

辻 洛南は日本人だけのチームなので、170cmあるかないかの小さい選手がスタメンで出ることは少なくて、僕も最初はBチームで、Aチームの選手がみんな僕より10cm以上大きいのを見て、「一生Aチームには入れない」と思いました。でも1年生の夏にAチームに入って、そこでの練習試合で「ここで失敗したらもう二度とAチームでのチャンスはない」、「ここでどれだけのプレーを見せられるかが勝負」、とすべてを懸けてプレーしたのが一番印象深いです。

西村 僕が洛南で良かったと思うのは河合コーチの影響で、僕がバスケを始めて1年か2年で、バスケを辞めようと思っていた時期があったんですけど、その時に河合コーチがいる洛南の試合を見て、小さいながらも頭を使ってバスケをする姿に感銘を受けたんです。自分が実際に見ていた選手がコーチになって、洛南でプレーしていたからこそ分かる部分の指導もあるので。中学ではリング下でのプレーに徹していた自分が外で打てるようになったり、ドリブルをつけるようになったのも、洛南に来たからだと思います。

──激戦の京都府予選を勝ち抜きましたが、日本一を目指す上でウインターカップ本番までに何をやりますか?

辻 最近は間違いなくポイントガード中心のチームが多くなっていて、インターハイでも福岡第一は轟琉維選手だけでなく中村千颯選手や崎濱秀斗選手もいて選手層がすごく厚いので、そこに対してどう思うようにプレーさせないかがカギになると思います。洛南はポイントガードが点を取るようなチームじゃないんですけど、福岡第一の場合はガードが中心になってピック&ロールをしてくるので、まずはボールを持たせないのが大事。トップリーグの東海大諏訪との試合で、轟選手がフェイスガードされてボールをほとんど持っていなくて。ボールを持つようになったら点を取り始めたので、やっぱりボールを持たせないところからのディフェンスが大事だと思います。

西村 僕の場合は留学生にマークされることが多くて、それで自分の得意とするペイントエリアでの得点が削がれるので、3ポイントシュートの確率を上げていくのはもちろん、ディープスリーも打てるようにして、ウインターカップまでにできる限り波をなくしたいです。あとは留学生に点を取らせない、リバウンドも取らせないディフェンスで、そこから自分たちの持ち味であるファストブレイク、組織的なオフェンスに繋げたいです。

──西村選手は193cmありますが、それでも留学生プレーヤーを相手に守るのは大変ですよね?

西村 そうですね。普通にフィジカルでやり合うだけでは無理なので、相手の研究を日々やりながら、行かせる時は行かせて、付く時は意表を突いてガッツリ付く駆け引きをしていきます。留学生はフィジカル一択であることがほとんどなので、そこを上手く利用しながら、ウインターカップでは身動きを取らせないようにしたいです。

辻永遠

「試合に出る選手が6人じゃ戦えないし、怒るだけじゃ絶対ついてこない」

──高校バスケ最後の大会、集大成となるウインターカップで、個人的に対戦したいチーム、意識する相手はいますか?

辻 インターハイで福岡第一に負けているので、リベンジしたい気持ちは強いです。あとは中学でキャプテンをやっていた高山鈴琉選手がいる東海大諏訪には負けたくないです。中部大学第一の下山瑛司選手はスピードスターで、ボールを持たれたら置き去りにされるので、それこそ持たせないディフェンスをやりたいです。

西村 僕自身は福岡第一を意識しますが、留学生がいるチームに自分自身が負けたくない気持ちが強いです。実際、洛南自体がここ2、3年は留学生相手に苦戦してきて、先輩たちの涙を実際に見てきました。留学生に勝つ姿を見せることが洛南の先輩に対しての恩返しだと思っているので。留学生のいるチームをどんどん打ち負かしていきたいです。

辻 留学生がいるチームはどう考えても有利だと思うんですけど、日本人だけだからこそ今練習しているオールコートのマンツーマンやゾーンでのオンボールへのプレッシャーをもっと徹底して、ウインターカップまでに仕上げたいです。

──それでは、ウインターカップで洛南のバスケを見る人たちへのメッセージをお願いします。

西村 洛南の美しさのあるプレーに加えて、自分自身はリバウンドやルーズボールだったりの泥臭い部分で頑張るとともに、スピード感のあるバスケを展開します。1チームで両方が見れるのが洛南の持ち味だと思うので、そこを楽しみに見てください。

辻 基本的には星川、三浦、西村が点を取るチームですが、点が入らず苦しい場面で1本自分がシュートに絡むようなセットをやったり、スティールから簡単なレイアップに繋いで相手の流れを断ち切るプレーをしていきたいです。あとは選手層が見てほしいところです。試合に出る選手が6人じゃ戦えないし、怒るだけじゃ絶対ついてこないので、力の差がある中でも自分たちのプレーにどうついてこさせるかは本当に悩みました。ポイントガードだと2番手の選手が夏休み明けからどんどん試合に絡むようになって、ウインターカップ予選の決勝でも活躍してくれました。そういう選手がウインターカップでもディフェンスが大事な時にチームのプラスになると思います。

西村 一人ひとりが他人任せじゃダメなことはインターハイで分かったので、それぞれがどの場所で輝けるのかを見付けて、伸ばしていくのを最後にやりたいです。そこが良くなったら、本気で日本一を狙えると思います。それこそ本当の意味でのチーム一丸、洛南の「集中、正確、粘り」に当てはまると思うので、15人の選手全員が同じ場所のそれぞれ違う場面で輝くのを見てほしいです。そうやって日本一を勝ち取って、全員で喜びを分かち合いたいです。