ルカ・ドンチッチ

「得点できても守れない」か「守れても点が取れず」かの両極端

11月後半から黒星が増えて勝率5割を下回ったマーベリックスは、はケンバ・ウォーカーの獲得に踏み切りました。移籍したジェイレン・ブランソンの穴を埋められず、ルカ・ドンチッチの負担が大きすぎることを考えると、マブスらしい3ポイントシュートを得意にするプレーメーカーのケンバは適切な補強に見えます。その一方で、マブスのスタッツを見ると疑問も湧いてきます。

マブスのオフェンスレーティングはリーグ10位と健闘していますが、ドンチッチがコートにいないと一気にリーグ最低クラスまで下がります。その一方でディフェンス面ではドンチッチがいない方が明確に守れるようになることで、致命的な欠陥にはなっていません。

役割が多過ぎてディフェンスをサボっていることも多いドンチッチをチームでカバーしている状況ですが、もう1人のハンドラーであるスペンサー・ディンウィディーとドンチッチを並べるとカバーが間に合わなくなり、さらにディフェンス力が低下してしまいます。

アグレッシブに仕掛けるガードコンビにするよりも、昨シーズンのようにドンチッチがベンチに下がっている時間帯にディンウィディーを起用することが好ましく、ここに守れないケンバを持ってきても、ディフェンスの悩みがより大きくなるはずで、根本的な問題は解決しません。

マブスの本当の補強ポイントは、ドンチッチやディンウィディーとコンビを組むディフェンス優先のセカンドガードです。ジェイソン・キッドがヘッドコーチに就任した昨シーズンからディフェンス強化に乗り出したマブスは、ディフェンスを中心にしたハードワーカーのウイングを並べることで結果を残しました。ドリアン・フィニー・スミスやレジー・ブロック、ジョシュ・グリーンを使うことで強固なチームディフェンスを作り、今シーズンはティム・ハーダウェイJr.の復帰でウイングの人数を増やしつつ、オフェンス面での期待もしていました。

しかし、この4人の得点を合わせても32.3とドンチッチ1人分の得点しか奪えず、3ポイントシュート成功率も33%と低調で、期待したオフェンスの改善ができていません。ディンウィディーやクリスチャン・ウッドを起用すれば得点は取れても守れない、ウイングを起用すれば守れても点が取れずと両極端で、選手起用によってバランスを取るのが難しい状況にあります。

攻守両面で貢献できる選手を獲得すれば良いのですが、そんな選手は簡単には手に入りません。ここでオフェンスを重視したケンバを補強することは、ドンチッチの負担を下げる効果は期待できても、チームが抱える問題を解決できるわけではありません。オフにはリムプロテクターを求めてジャベール・マギーを獲得したものの活用できていない現状を考えると、チーム戦術と補強が噛み合っていない印象を強く受けます。

攻守のバランスが良い選手もいれば、偏った特徴で大きなメリットを生み出す選手もいます。その中で適切に組み合わせを探り、チームとして機能させるのが重要ですが、マブスの場合はドンチッチの周囲にディフェンス寄りではあるもののバランスの良い選手を配置することで、昨シーズンの成功が生まれました。今シーズンはウッドやマギーなどオフェンス側に偏った特徴を持つ選手を組み込みましたが、結果としてチームとしてのバランスを崩した印象もあります。トレードデッドラインに向けてバランスタイプの獲得を目指すのか、それともより特徴が強い選手を加えて、全体を調整していくのか。ケンバの活躍ぶりも見ながら、動く必要がありそうです。