指揮官も脱帽「このレベルまで俊敏性を取り戻すとは驚きだ」
クリッパーズのジョン・ウォールは11月30日のジャズ戦でシーズンハイとなる26得点を記録した。カワイ・レナードはいまだ戦線復帰できず、ポール・ジョージもハムストリング痛で欠場して、バック・トゥ・バック(2日連続の試合)の2試合目と不利な条件が重なりチームは112-125で敗れたものの、ウォールは完全復活に向けて着実に歩みを進めている。
ウォールは自身の代名詞であるドライブのキレを取り戻した。彼の判断の良さやスキルの精度はトップスピードでプレーするからこそ光るもの。スピードで圧倒し、相手の判断能力を奪うことで、彼は試合を支配する。全盛期に猛威を振るったその能力を、今の彼は取り戻しつつある。
11月19日のスパーズ戦では第1クォーターだけで9アシストというNBA記録を打ち立て、試合トータルで15アシストを記録。25日のナゲッツ戦では23得点を挙げ、このジャズ戦ではクリッパーズのファーストオプションになり、フィールドゴール19本中7本成功、またフリースロー13本を獲得して12本を決め、26得点を挙げている。
ウォールは『CBS Sports』に対し「素晴らしい感覚でプレーできている」と語る。「これは最高の仲間たちが支えてくれるおかげだ。オーナーからコーチングスタッフ、トレーナー、このクラブで働くすべての人たち、そしてもちろんファンのみんなも、全員が僕を温かく迎え入れてくれた。ここに来たその日から、家族のように感じている。ここで高いレベルで競い合い、大好きなバスケをプレーできるのは、本当にうれしいことだ」
少し前までの彼は絶望の淵にあった。2018年12月にかかとの手術を受けた後、自宅で転倒して左足アキレス腱の断裂という大ケガを負った。その後に感染症にかかったこともあり、復帰には長い時間を要した。2020-21シーズンにはロケッツで再起を果たしたものの、再建中のチームはウォールを構想に含めなかった。
ウィザーズの看板選手でありコミュニティの重要人物だったウォールが、コートを離れて自分の立ち位置を見失い、母を亡くした。コロナ禍の2年半を彼は「今までで一番暗い場所」と語り、「死のうと考えたこともある」とまで明かしている。
だが、彼はようやく自身の困難を乗り越えた。そして、クリッパーズのバスケに彼のプレースタイルは見事にフィットしている。カワイ・レナードとポール・ジョージを軸とするオフェンスは、個人能力をじっくり生かすためペースが遅い。ウォールはベンチから出ると、そのペースを一気に引き上げる。このメリハリが相手チームの脅威となる。
クリッパーズの指揮官、ティロン・ルーはウォールについて「このレベルまで俊敏性を取り戻すとは驚きだ。少しずつ調子を上げてここまで来た。彼のバスケは洗練されているよ」と絶賛する。いまだケガ人が多いクリッパーズだが、ウォールの復活がチームの雰囲気を非常に良いものにしている。