早くも前年比1.5倍と成果を上げる3ポイントシュート改革
JX-ENEOSサンフラワーズが恐ろしいほどの強さを見せつけた。4位シャンソン化粧品シャンソンVマジックを相手に、第1ピリオドから27-7と20点差をつけ、84-53のワンサイドゲームで圧倒した。同じ日、2位のトヨタ自動車アンテロープスが、3位富士通レッドウェーブに45-61で敗れ、初黒星を喫した。これによりJX-ENEOSが無傷の単独首位に躍り出る。ホームタウン千葉にある船橋アリーナ、約1カ月ぶりの首都圏開催ということも相まって、黄色いタオルマフラーを持って駆けつけた多くのファンを満足させる試合内容だった。
キャプテンの吉田亜沙美は、「ここまでは順調に来ているし、JXのバスケットができている。チームとしても上がってきています」と手応えを感じている。
今シーズンからトム・ホーバスがヘッドコーチとなり、まず着手しているのがディフェンスだ。「スタートで出ている5人もそうですし、後から出てくる控え選手も、徹底的にディフェンスすることがチームの課題」となる。そのディフェンスを遂行したことで、平均76.1点とリーグ2位(1位はJX-ENEOSの平均86.29点、同2位デンソーアイリスの平均76.1点)と爆発力あるシャンソンのオフェンスを、今シーズン最低となる53点に抑えることができた。さらに第2戦目は84-50で圧倒している。
吉田亜沙美のゲームメイク、渡嘉敷来夢のワールドクラスの高さ、多くの日本代表選手を擁するのがJX-ENEOSの表面的な強さだ。だがそれ以上に、圧勝していても、連覇していても、突き詰め続けている『向上心』こそがJX-ENEOSの本当の恐さである。
オリンピックメンバーの宮澤夕貴は本格的にフォワードへコンバートされ、今シーズンはシューターとして新境地を開いた。センターの間宮佑圭は、リオで見せたような幅広いシュートレンジから確率良くジャンプシュートを決めていく。圧巻は3ポイントシュートまで沈めたことだ。
JX-ENEOSの課題改善として、ホーバスは3ポイントシュートを打つことも徹底させている。それについて吉田は以下のように説明してくれた。
「練習の時からトム(ホーバス)は『シュートを打たなければゲームに出られない』と言い続けており、より積極的にシュートを打つようになりました。JXにはシュートがキレイな選手はいっぱいいて、練習中はすごく入るのに試合になると打たない。やっぱりゲームで試しながら、挑戦していかなければ、入るシュートも入らなくなります。その意識が昨年とは全然違います。トムに言われたこともありますが、自分たちで意識して変化させて成長しなければいけない課題として、みんなが取り組んでいます。それが今シーズン、レベルアップした部分です」
3ポイントシュートの試投数は大幅に改善されている。昨シーズンのレギュラーシーズン24試合において279本(成功92本/33.0%)であり、そのうちの半分を岡本彩也花が占めていた。しかし今シーズンは、これまで18試合を終えた時点で、早くも1.5倍の435本を放っている(成功142本/32.4%)。
岡本以外にも、宮澤(40/101:39.6%)を始め、昨シーズンは2本しか打っていない大沼美琴(18/48:37.5%)、同じく5本だった木林稚栄(7/16:43.8%)らフォワード陣の試投数が一気に増加し、さらには確率も悪くない。対戦チームにとっては、ディフェンスでの的が絞りにくく、さらにやっかいな存在となっている。
完全勝利がチャンピオンチームの『自覚と責任』
シャンソン戦を吉田は心待ちにしていた。オリンピックをともに戦った本川紗奈生、三好南穂と再会を果たし、その本川がマッチアップする。「オリンピックで一緒に戦ったメンバーと対戦するのが、私にとってはモチベーションの一つです」と、吉田は試合中にも笑顔を見せていた。
次節はトヨタ戦、そしてレギュラーシーズン1ラウンド最終戦のデンソー戦とオリンピックメンバー擁する戦いが続き、勢いそのままに4連覇を狙うオールジャパン(皇后杯)へ向かう。
「毎試合が楽しみですが、チャンピオンチームらしいゲームをしなければならないという自覚と責任を持たなければなりません」と吉田は話しており、完全勝利をしなければならないのが女王JX-ENEOSの宿命でもある。シャンソン戦は2試合とも大差がついた。しかし、その試合をチームはもちろん、ファンも求めており、決して退屈な試合ではなかったはずだ。
先週は大阪エヴェッサと、そしてシャンソン戦は千葉ジェッツと、Bリーグクラブとの共同開催が続いた。「女子はオリンピックで、今度は男子がBリーグで、男女一緒にバスケットを盛り上げていければ良いと思っています。先週は私たちの試合の前に大阪戦がありましたが、ファンの方の熱さをすごく感じました。Bリーグになってからお客さんの数が増えていたり、地上波で放送されたり、それは女子にとって憧れる部分です。いずれ女子も同じようにプロなればいいな、と思います」と今の状況を吉田は歓迎している。
注目度では劣るWリーグだが、その中でもJX-ENEOSは勝利を突き詰め、強さで日本のバスケットを牽引している。
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