アンファニー・サイモンズ&デイミアン・リラード

「今こそやるべき時だと思った。そして彼はやってくれた」

デイミアン・リラードが41得点を挙げ、トレイルブレイザーズがホームで勝利した。

この一文だけを見れば、いつものリラード、いつものブレイザーズとの印象を受けるだろうが、今起きているのは世代交代だ。リラードはフィールドゴール25本中12本、フリースローは12本すべてを決めて41得点を挙げたが、試合を決めたのはリラードではなくアンファニー・サイモンズだった。

リラードがどれだけ活躍しても勝ちきれず、最後は力尽きる。これはトレイルブレイザーズが何度も繰り返してきた負けパターンだが、この試合は違った。第4クォーターの終盤、リラードはパスをミスし、決めれば決勝ブザービーターのシュートはリングに嫌われた。リラードは絶好調だったが、相手のマークは集中し、疲れてもいた。勝ちきれずに102-102で延長に入った時点で、リラードはチームの舵取りをサイモンズに任せた。

「いつも僕がシュートを打つと分かっていれば、相手は守りやすい。土壇場で僕が仲間を信頼できないなら、相手はそれを利用してくる。今こそやるべき時だと思った。そして彼はやってくれた。僕にとっても重要な瞬間だった」。そう語るリラードの表情は、自分が決勝ブザービーターを決めたかのように高揚していた。

前半のサイモンズはフィールドゴール7本中成功わずか1本の3得点、アシストはなくターンオーバー4つと絶不調だった。それでも少しずつリズムをつかみ、終盤にパフォーマンスを上げた。そのサイモンズに対し、リラードはこんな言葉で気合いを入れたという。「今までやってきたことを思い出せ。大型契約をもらって、デカい仕事をすべき時だ。お前ならできる」

オーバータイムに入って最初の3分20秒はクリス・ポールとデビン・ブッカーの息の合ったコンビネーションを止められずに106-111とビハインドを背負うが、ここからサイモンズが攻撃のタクトを振るうブレイザーズが逆襲に転じる。ペイントエリアでフリーになったユスフ・ヌルキッチの動きを見逃さずにパスを送ってフリースローで1点を返し、今度はリラードとヌルキッチの動きに相手がつられて空いたゴール下に走るジェレミー・グラントを見逃さずイージーレイアップをアシスト。これらの動きはすべて、相手ディフェンスの警戒がリラードに集中する中で、サイモンズが相手の裏を突いたものだ。

残り33秒で今度はリラードがドライブを仕掛けて手堅くファウルを誘い、さすがの貫禄でフリースロー2本を決めて、111-111の同点に追い付く。タイムアウトを取ったサンズの攻めは、この日33得点を挙げているブッカーのアイソレーションだったが、これをジョシュ・ハートが懸命に腕を伸ばして外させ、モダ・センターの観客席はこの日一番の盛り上がりを見せた。

だが、『この日一番の盛り上がり』はその20秒後に更新される。ずっとパスをさばいてきたサイモンズが今度はリムに仕掛け、ミカル・ブリッジズをかわすフックシュートを沈めたのだ。『デイム・タイム』ならぬ『アンファニー・タイム』の一撃で勝ち越したブレイザーズが113-111で勝利した。

サイモンズのクラッチフックシュートに、リラードは驚かなかった。「いつも練習で試しているシュートだからね。あれは彼の得意なシュートになりつつあるよ」。そしてサイモンズ自身も、「あれはブロックされたことがないんだ」と自分の強力な武器になると感じている。

それでも、リラードが若いサイモンズにすべてを託して一歩引くわけではない。リラードは「まあ、左手で打つなら僕の方が上手いね」とジョークを飛ばし、こう続けた。「僕にとってちょうど良い居場所を見付けたように感じるよ」

昨シーズンはリラードが腹部のケガで長期欠場し、相棒のCJ・マッカラムはシーズン中にトレードされ、プレーオフ連続出場が8で途絶えた。チームは解体に向かうとの見方もあったが、今シーズンは再び強いブレイザーズが見られそうだ。