ガードが多く、ウイングが少ないロスターが懸念材料

父親をスタッフに迎えるなど、入念に根回しを行った上でジェイレン・ブランソンを獲得したニックスは、さらにドノバン・ミッチェルのトレードも噂されましたが成立することはなく、RJ・バレットとの契約延長で決着しました。2025-26シーズンまでブランソン、バレット、ジュリアス・ランドルとの高額契約が締結され、この3人を中心に据えたチームの中期計画がスタートしました。

ドラフトでは11位指名権を保持していたものの、将来の下位指名権と交換で放出しており、中心になれる素材を獲得するよりも、現行メンバーで勝負することを選びました。ミッチェルの件も含めて、いろいろな選択肢が見えていたからこそ迷いもあったでしょうが、方針を決めたからには振り向かずに進むだけです。

バレットとランドルはともにフィールドゴール成功率が低く、大きなネックであったところに成功率の高いブランソンは効果的な組み合わせです。サイズはないものの、ミドルレンジの正確なシュートはブランソンの最大の武器であり、ニックスがハンドラーに求める個人で決めきる能力を有しています。個人としては全く問題なくフィットし、大活躍してくれるでしょう。

その一方で、バレットとランドルとプレーエリアが被るため、3人がコンビネーションで崩すというよりも、個人突破の組み合わせが連続していく形になりそうです。ポジティブに見れば周囲を固めるエバン・フォーニエやイマニュエル・クイックリー、クエンティン・グライムズなどのガード陣はもちろん、インサイドのオビ・トッピンも3ポイントシュートを得意としており、ゴール下ではミッチェル・ロビンソンが高確率で押し込んでくれます。エース3人がミドルレンジを攻略し、周囲が3ポイントシュートとゴール下を堅実に決めていけばチームとしてバランスの取れたオフェンスが構築できます。

ネガティブな要素としてはロスターにガードが多過ぎることが挙げられ、純粋なウイングが少ない構成になっています。しかも、キャメロン・レディッシュは移籍希望を口にするなど、層が薄いだけでなく役割定義があいまいで、選手個人が自らの必要性に疑問を持っている印象があります。そのレディッシュはプレシーズンではスターターで起用されると、結果的にベンチメンバーがガードだらけになり、バランスの悪さを感じさせました。

喉から手が出るほど欲しかった ブランソンを加えたからには、描いていた理想の形をいち早く完成させ、勝ちパターンを確立させたいところです。昨シーズンは勝てない時期が続くとランドルの怠慢なプレーが目立ち始めるなど、個人技中心の構成は結果が伴わないと内容も悪くなってくるだけに、新シーズンは開幕ダッシュして成功体験を積み重ねることが重要になるでしょう。