髙田に依存していたセンターでもプレータイムのシェアが可能に
9月22日から始まる女子ワールドカップ2022の代表メンバーが発表され、渡嘉敷来夢も順当に選出された。日本随一のインサイドプレーヤーとして、長らく国際舞台でも確かな実績を残してきた渡嘉敷だが、故障の影響で欠場せざるを得なかった東京五輪を筆頭にここ数年は主要国際大会から遠ざかっていた。世界大会の出場は実に2016年リオ五輪以来となる渡嘉敷は、こう意気込みを語る。
「久しぶりの世界の舞台ということもあって、しっかりと自分のやってきたことを出せたらいいなと思っています。日本にはない高さというところで、少しはチームに貢献できると思うので、そういったところでリバウンドだったり、大きい選手のディフェンスというところで身体を張って、地味ですけど頑張りたいと思います」
当たり前だが、渡嘉敷の存在は今回もリオ五輪の時と全く変わらず大きなものだ。渡嘉敷不在の日本代表はインサイドで髙田真希への負担が大きくならざるを得なかったが、今回はセンターでもプレータイムのシェアが可能となっている。これは短い時間で選手交代を頻繁に行うことで、強度の高いディフェンスを40分間継続させていく新しい日本代表の戦略にとっても大きい。
リオ五輪ではインサイドを強調していく攻めが多かったこともあり、渡嘉敷は6試合で平均17.0得点を挙げた。ただ、今の代表は、プレータイムだけでなくボールもシェアしていくスタイルで当時と大きく違っている。今大会、渡嘉敷に集中的にボールを預ける展開となる可能性は低いだろう。それは冒頭で本人が語ったように、リバウンドや相手の長身選手へのディフェンスによりエネルギーを使うことができることを意味する。
渡嘉敷は「求められることを一生懸命やりたいなと思っています」と語るが、自身のやるべきことを高水準で的確に遂行してくれる選手がゴール下を支えてくれることは、チームにとって大きな精神安定剤だ。また、その豊富な経験と声を積極的に出してチームをまとめていくリーダーシップは、数字に出ない部分でもチームの大きな助けになる。
昨年に現役復帰、豪州代表のジャクソンとのマッチアップを楽しみに
東京五輪で、インサイドの選手も積極的に3ポイントシュートを打っていく日本のスモールボールは唯一無二のスタイルとなっていた。しかし、女子バスケットボール界も徐々にではあるが、男子と同じようにセンターが外から打つなどポジションレスの流れが出てきている。渡嘉敷個人としては、そういった今の世界トップレベルの選手たちと対戦することは大きな楽しみとなっている。
「外から3ポイントシュートが打てる、外から1対1ができるセンターが増えているのは、本当に自分自身にとって刺激的です。そういう選手と日本ではあまりやる機会がないので、海外に行ってできるのは個人的には一番楽しみにしているところです」
中でも渡嘉敷がマッチアップするのが楽しみと、具体的な名前を挙げたのがローレン・ジャクソンだ。195cmのジャクソンは、女子バスケットボール界を代表するレジェンドであり、WNBAで3度のシーズンMVPに輝き、オーストラリア代表の大黒柱として五輪でメダルを4つも獲得している。2016年を最後に一度は現役を退いたが、昨年に衝撃の現役復帰を果たし、地元開催のワールドカップ代表に選出された41歳の大ベテランだ。
そんなレジェンドとの対戦を心待ちにする渡嘉敷は言う。「基本、ダイブの形になっていますが、それ以外でチャンスがあれば外からどんどんアタックしていきたいなとは思っています。3ポイントシュートも積極的に打っていますし、ドライブからみんなが寄ってきたら外にパスをさばくのは前に代表でプレーしていた時より増えている部分はあると思います」
リオ五輪以来となる世界大会で渡嘉敷がどんなプレーを見せてくれるのか、それは日本だけでなく世界の女子バスケット界も注目している。進化した渡嘉敷の攻守でハイレベルなプレーが、世界に衝撃を与える時はもうすぐだ。