会場を揺らす『フジナガ』コールに「鳥肌が立った」
10月24日に行われた千葉ジェッツvsレバンガ北海道の一戦は、激しいディフェンスから速攻に転じる高速トランジションオフェンスが機能した千葉が100点ゲームで大勝した。
千葉の持つ破壊力が最も表れたのが第2クォーターだった。開始から約5分30秒間、相手に得点を許さず、19-0のランで試合の趨勢を決めた。そしてその時間帯を牽引したのが藤永佳昭だった。第2クォーターの頭を任された藤永は持ち前のアグレッシブで粘り強いディフェンスを披露し、北海道オフェンスを停滞させた。「ガードにエントリーさせると、すんなりチームオフェンスができてしまうので、(パスした後)もう一回ガードに戻させないようにディフェンスをハードにしました」
結果、ビッグマンがボールの貰い手を探そうと孤立し、ガードにボールを返すのに時間を費やした。オフェンスでリズムを失い、ショットクロックわずかな時間から放つタフショットは決まらないもの。ここから千葉はトランジションオフェンスを繰り出し、リードを一気に広げた。
スクリーンを使ってガードを助けようとする北海道に対し、アンダー(スクリーンの下を通ってかわす)せずにフィジカルに食らいつく藤永に対してムービングスクリーンがコールされた。すると会場から『フジナガ』のコールが沸き起こった。ディフェンスは良いプレーでも目立たないもの。大事な場面でのバスケット・カウントや試合を決めるブザービーターに対し称賛のコールが起きることはあっても、良いディフェンスで会場が沸くのは珍しい。それだけ気持ちの入ったディフェンスであり、試合の流れを変えるアクションだったということだ。
「みんなもディフェンスで会場が沸くことはなかったと言っていたので、新しい風というか、良い影響を千葉に与えられて良かったです。鳥肌が立ったというか、気持ち良かったです」と、藤永も笑顔を見せた。
「本当に『チーム』という感じがしています」
それまでの7試合で、3試合で出場なし、4試合での平均出場時間は3分を切っていた藤永。ところが昨日の試合では、今シーズン最長となる17分間のプレータイムを得た。プロであっても、いきなりプレータイムを与えらえ、自分らしいプレーを出すのは難しいはずだ。それでも藤永は「練習でも普通にプレーできているので、出たら思い切りやろうと心がけていました」と話す。
「毎試合こういうエナジーを出していかないといけない。チームが悪い状況でも、自分がエナジーを出して良い方向に持って行けるようにしたいです。流れを変えることが僕の仕事なので、それを実行できたのは良かったです」
すでに大差がついていた最終クォーター、藤永に出番が回ってきた。すると再び藤永コールが起こった。大量リードを作るきっかけとなった選手が誰か、ファンは理解していたのだ。
試合終了までコートに立ち続けた藤永だったが、得点はフリースローで挙げた1得点のみとオフェンス面に課題を残す結果となった。ディフェンス面で大いに勝利に貢献したが、「オフェンスの部分が良くなかったので50、60点かなと思います」と厳しめな自己評価となった。
今シーズン最長のプレータイムを与えられ、自分の役割をしっかり果たし、勝利に貢献した。本当の意味でチームの一員になれた日となったはずだが、藤永はそれを良い意味で否定する。「僕が出ても出なくても、外国籍選手も含めてチームのみんなが声をかけてくれるので、本当に『チーム』という感じがしています。なので今日はプレータイムは長かったけど、特別というわけではないです」
プレータイムが減ることも覚悟の上で、千葉への移籍を決意した藤永。今のところ出場機会は昨シーズンより減少しているが、これまで以上に充実したシーズンになっているはずだ。
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