三遠ネオフェニックスでプロに挑んだ寺園脩斗、確たる自信を得つつも「まだまだ」

2018/10/25
Bリーグ&国内
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寺園脩斗

文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

「すごく点が取れると思っていました」と苦笑い

昨日、三遠ネオフェニックスは敵地で川崎ブレイブサンダースに65-56で快勝した。川崎はオフェンス不振が深刻で、先週末はアルバルク東京に連敗していたが、リーグ屈指の力を誇る優勝候補であることに変わりはない。その川崎を40分間きっちり守って波に乗らせず、終盤は常に2桁前後のリードを保つ完璧な勝利。藤田弘輝ヘッドコーチが「川崎を56得点に抑えるプランはとてもじゃないけど組めませんが、ディフェンスのエクスキューション(遂行力)、ピック&ロールやハンドオフからの2メンゲームの対応が非常に良かった」とディフェンスの勝利を強調する。

これで三遠は6連敗から脱出。全員が自分の仕事を果たす、まさにチーム一丸の勝利ではあったが、そんな三遠の中でも特に積極性が目立ったのがルーキーの寺園脩斗だ。東海大を卒業後、一度は実業団の九州電力に進んだが、「Bリーグでやりたい」という気持ちを抑えきれずに三遠に入団した『遅れてきたルーキー』である。「ここで行かないと後悔すると思ったから、人生を懸けてBリーグに挑戦する」という意気込みで臨んだBリーグで、開幕から全試合でスタメン出場。がむしゃらに頑張る寺園は、今どんな風景を見ているのだろうか。

「すごく点が取れると思っていました」と寺園は苦笑いを浮かべる。「やっていく中でチームのルールもあるし、相手のディフェンスも実業団と違って外国籍選手もいて、すごくハードに当たってくるので、そう簡単に点は取れないんです(笑)」

「三遠はボールをシェアするので、そこで自分が変わる必要がありました。コントロールする部分が課題でしたし、コーチから求められてもいました。まだまだですけど、少しずつやれてきていると思っています。初戦から京都さん、千葉さん、琉球さん、そして新潟さんとやってきたんですけど、どのガードもそれぞれ個性があって、自分より上だと感じます。そういう人たちに食らい付いていくために、日々の練習から努力しなければいけない。まだまだです」

寺園脩斗

「オフェンスもディフェンスも通用していない」

その『まだまだ』はどれぐらいのレベルだろうか? 「オフェンスもディフェンスも通用していないですね」と寺園は言うが、その苦笑いは実に楽しそうでもある。「千葉戦では富樫(勇樹)さんにいいようにパスを回され、琉球戦では岸本(隆一)さんや並里(成)さんに好き勝手にやられました。全体を見てチームをコントロールする役割も担っていますが、そういう部分も含めてもまだ全然です」

とはいえ、ケガで出遅れた鈴木達也に代わりルーキーの彼が先発ポイントガードの重責を任されている。これは藤田ヘッドコーチの期待の表れと見るべきだろう。「まだ若くて勢いがあるから、速攻で一人で持っていくような部分をゲームの入りから出せば、こっちに流れを持ってこれるんじゃないか、そこを期待されて使われているんだと自分では解釈しています。緊張とかは最初の京都戦から全くありませんが、ガードがコントロールしなきゃいけないのに先輩方に助けてもらってばっかりで、そこで自分が成長して先輩方の負担を減らさなきゃいけないです」

スタメンを任される一方で、勝負どころの第4クォーターはベンチに座っていることが多い。川崎戦も第4クォーターの出場はなし。「悔しいというのはないですね。誰が出てもチームでやらないといけないことを遂行することがこのチームのスタイルなので、自分が出た時に頑張って、それ以外の時はチームのために声を出す。それがこの三遠というチームのすごい良いところだと思っています。だからあまり悔しいとは思いませんが、いつでも行ける準備はしています」

寺園が奮闘する一方で、鈴木達也の復帰も見えてきている。「鈴木選手が戻ってくると自分のプレータイムは少なくなると思いますが、そこで負けないように自分をアピールして、プレータイムをもらうのが目標です。出た時に自分の役割を遂行する、それを今シーズンはやっていきます。どれだけ点が取れなくても、ミスしても、自分はディフェンスでカバーできると思っているので。あとは声を出して盛り上げたり、そういう部分で貢献できるならやっていきたいです」

寺園脩斗

「行けると思ったら行くのが自分のスタイル」

『Bの壁』にぶち当たり「通用していない」と自己分析しながらも、一定の手応えは得ている寺園。そんな彼を藤田ヘッドコーチは「まだ若くて新加入で、このチームの細かいルールへのアジャストに時間がかかっていましたが、毎回の練習ごとに飲み込んでくれて、良くなっています」と評する。『遂行力の勝利』となった川崎戦で寺園が自信を持ってプレーできたのも大きい。

オフェンスでもディフェンスでもチームルールを徹底し、ガードとして試合をコントロールする術も学ぶ中、ストリートボールのスタイルも忘れてはいない。1試合で数回かもしれないが、自分で行くと判断した時は迷いなく、コンタクトを恐れずにゴール下での勝負に行く。「行けると思ったら行くのが自分のスタイルだし、そこで迷ったらチーム全体のシュートリズムも崩れてしまうので。行けると思った時は行きつつ、コントロールすべきだと思ったらコントロールする。それができれば、Bリーグを代表するようなガードにも通用してくると思います」

「ミスしてもディフェンスでカバーできる」という自信を守備のチームである東海大で得た。ストリート的な勝負度胸もある。飽くなき向上心と責任感は実業団で培ったものだろう。そして今、三遠での寺園は試合をコントロールできるポイントガードになろうとしている。自己評価は「まだまだ」でも、チームメートを集めて声を掛ける姿には『司令塔らしさ』が垣間見える。「先輩とか関係なしに試合中に集めて言いたいことは言わせてもらっています。その空気感はすごく良いですね」と寺園。Bリーグ挑戦の序章はまずまずのスタートとなった。ここから先にどこまで伸びていくか。寺園は目の前の課題にがむしゃらに挑み続ける。