河村の連続スティール「あれが試合のターニングポイントだった」
バスケットボール男子日本代表はカザフスタンとのアジアカップ初戦に100-68で勝利した。スコアだけを見れば圧勝だが、45-48とビハインドを背負って試合を折り返したように前半は劣勢だった。後半に入っても、唯一人、シュートタッチが好調だった西田優大が手を痛め、ベンチに下がる事態に陥るなど厳しい状況が続いた。しかし、こうした嫌なムードを河村勇輝が払拭した。
河村はマークマンにプレッシャーをかけ、個人の力だけでボールを奪うと連続でワンマン速攻を成功させた。さらにパスコースを読み、抜群の出足でパスカットからも速攻を決めるなど、日本が目指す激しいディフェンスからのトランジションを体現した。指揮官のトム・ホーバスも「相手のオフェンスリズムがおかしくなって、あれが試合のターニングポイントだった」と、河村のディフェンスを絶賛する。
河村は「自分の役割は限られた時間の中、一つのプレーで流れを変えること。そういう評価をしてもらったことはうれしい」と言い、代表初得点に関しても「特にそこに思い入れはなかったです」と至って冷静だ。
最年少とは思えない堂々とした戦いぶりを見せた河村について、ホーバスヘッドコーチは彼のパフォーマンスが練習よりも一段階上がったと明かした。「試合に出ると特別なスイッチオンをする。ゲームに入ると、オンボールプレッシャーが上がって、特にスティールがすごかった。彼は若いけど自信があって、プレーに波がないところがすごい」
それぞれがお互いの特長を熟知しているため、練習で持ち味を十分に発揮できないことは少なからずある。河村もそれを肯定しつつ、結果が求められる状況が自身のパフォーマンス向上に繋がったと分析した。「練習は探り探りいろいろなことを試しながらやりますが、試合は勝たないといけません。結果が求められる状況で、勝つために何が必要なのかをその場で判断しないといけないので、練習とは違った緊張感だったり、プレーの選択が良い方向に繋がっているんだと思います」
ディフェンスの主役となった河村だが、良かったのはディフェンスだけではない。その広い視野でノーマークを見つけ出しては的確なタイミングでパスを送り、高速ドライブからのキックアウトでディフェンスを収縮させるなど、13分9秒の出場ながらゲームハイの8アシストを記録した。
渡邊雄太も「彼のパスセンスがすごいことは練習から分かっていた」と言い、あのパフォーマンスが驚くべきものではないことだと主張した。また、渡邊は日本の大黒柱として21得点(ゲームハイ)8リバウンド4アシスト3ブロックと圧巻のスタッツを残したが、「昨日の試合のMVPは彼だと思う」と、最後まで河村のプレーを称賛した。
日本は明日、グループリーグ2戦目でシリアと対戦する。慢心のない河村はこのように意気込んだ。「3連勝してグループ1位で予選を通過することが、チームの直近の目標です。この勝利に満足することなく、前半で課題となったディフェンスの強度を40分間保ち、戦い抜けるように頑張っていきたいです」